杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 10月2 No.70



今後の予算編成にモノ申す!(その1)
新しい行政計画&来年度の予算編成に向けて55項目の要望


 杉並区では、「21世紀ビジョン(基本構想)」の完成を受けて、いま、新しい行政計画を作成しています。また、来年度の予算編成にあたっての準備も始まっています。

 区が検討している行政計画は、基本計画(10ヶ年計画)と、実施計画(3ヶ年計画)。これらの計画については、議会の議決が不要になっていますし、当然ですが、予算案(原案)についても、議会は提出権を持っていません。そこで、区は「新しい10カ年計画(基本計画)素案」を10月1日に公表し、議員をはじめ区民の意見を募り、策定する方針を打ち出していました。

 私からは、現在の区の状況を踏まえ、区に対し、次のような内容の要望書を提出する予定ですが、今回と次回の2回に分けて、これをアップします。今後の動きについては、随時このコーナーにアップしていきます。


 新しい行政計画の策定あたって(主な要望項目・その1) 

1.(区長選挙公約の遵守)
 区長の選挙公約を達成することができる計画や予算の編成を行うこと。
  • 山田区長は、前の区長とは異なり、国会議員時代より具体的で明確な主張や公約を掲げており、現状改革の意気込み・やる気については申し分ありません。天変地異でも起こらない限り、その公約を守っていくのは、当然のことですが、現在守られていないものがあります。
2.(赤字区債の原則発行中止)
 今後、原則として赤字区債(減税補てん債)の発行をやめる方針を打ち出すこと。
  • 赤字区債の発行は最大の公約違反です。国会議員時代の政治主張からみても、とても容認できるものではありません。当面、天災等やむをえない事情を除き、赤字区債の発行をやめることを原則に掲げ、将来の世代にツケを残さないようにしなければなりません。
3.(歳出削減の徹底)
 将来の区の教育水準・福祉水準の低下を防ぐためにも、当面は減収に見合った厳しい歳出削減を実施すること(区長選挙公約である区の支出の20%削減を聖域を設けず実現すること)。 

 現役世代のエゴで、子どもや孫の世代が苦しむことのないよう、各計画毎に明確な財政再建目標を定義していくこと。
  • これまで杉並区は、明確な財政再建目標もなく、予算を組み立ててきました。驚くべきことですが、事実です。その結果、区は後先も考えず、大量の赤字区債を発行しつづけてしまいました。

4.(損益計算書の作成・公開)
 行政サービスにも、今後はある程度「費用対効果」の考え方を取り入れていく必要がある。行政の効率性を図る観点からも、決算の際に損益計算書の作成・公開を義務化すること。
  • 税収の落ち込みと、膨大な区債償還の必要性を踏まえたとき、どんなに素晴らしい施策であったとしても、それが高コストのものであれば、再検討する必要があります。このため、行政運営にかかるコストを明確に示した資料を作成し、公開していく必要があると考えます。昨年、区でははじめてバランスシートが作成されましたが、一歩進んで民間でいうところの「損益計算書」に相当するものも作成・公開していくべきです。

5.(区有財産の有効活用や売却)
 利用率の低い施設や、純粋な福祉施策とはいえない施設は、整理統合を進めること。また、区有財産の有効活用・売却等を進めていくこと。
  • 出張所跡地など整理統合後の遊休施設は、とくにニーズの高い保育・介護施設等に改修するほかは、積極的に売却を進め、バランスシートの改善を図っていくべきと考えます。そのほか区庁舎のリースバック等も検討していくべきでしょう。
 
6.(区営宿泊施設の廃止)
 健康学園の廃止を俎上にのせる前に、毎日利用されていない数々の区営宿泊施設こそ、むしろ先に廃止を決定するべきである。

 とくに菅平学園は即刻廃止すること。もちろん、その他の宿泊施設についても、改善が見込めない以上は、速やかに廃止すること。
  • すぎなみ自然村、湯河原すぎなみ荘など、杉並区は8つの宿泊施設を経営しています。うち5つの宿泊施設では、毎年大幅な赤字を出しており、その実態は目を覆うばかりです(うち5つの施設の赤字額は計7〜8億円にも達しています)。

7.(杉並公会堂など不要不急のハコモノ建設の中止)
 将来の世代に禍根を残すハコモノ建設計画は、この際やめること。どうしても改築・建設する場合にも、区民のニーズや今後の財政見通しを把握してから計画を進めること。
  • とくに建設をやめるべきものとして、杉並公会堂の改築、西福祉事務所の改築、区民会館の改築などを指摘したいと思います(公会堂と区民会館は廃止し、福祉事務所については保健センター等との再編を行うこと)

8.(PFIの導入)
 PFIに関する調査研究を進め、区においても積極的な導入を図ること。
  • どうしても新たな公会堂をつくってほしいという意見も根強いようです。これは区民の毎日の生活に直結しないハコモノ建設ですので、この財政難に区が直接行うべき事業とは思えませんが、PFIの検討課題の一つではあるかもしれません。

9.(図書館建設計画の延期)
 厳しい財政難を考慮し、図書館の建設計画は急がず、延期すること。
  • すでに区内には10ヶ所からの図書館がありますが、この財政難では、施設建設などしている余裕はありません。むしろ将来、図書購入費を極力落とさないで済むように、予算配分を考えるべきです。ちなみに、現在の区の年間の図書購入費は、約2億円。先日視察に行った宮崎市は人口40万人台ですが、4,000万円に過ぎませんでした。この高水準を落とさないようにするには、ハコモノ建設を先送りすべきです。

10.(既存の公共施設の再編)
 環境・リサイクルセンターや消費者センターの建設は見合わせ、既存施設の活用ないし民間施設の借り上げで対応すること。
  • 現在、複合施設という形で建設する予定になっていますが、当面は建設を延期するべきでしょう。今後、福祉事務所や保健センター等と同様、既存の公共施設との再編を行うなかで、結論を出すべきです。

11.(興銀グラウンドの買収規模)
 国や都の財政見通しは区以上に暗い。日本興業銀行所有の柏の宮グランドについては敷地全部を買収せず、買収規模を半分にとどめること(▲詳細はこちらへ)



12.(直営事業のあり方の再検討)
 民間でもできる仕事は民間に任せること。ゆくゆくは強制競争入札制度の導入も視野に入れて直営事業のあり方を再検討すること。


13.(入札の公開)
 区が行う全ての公共事業や物品・サービスの購入に関する入札結果等については、すべてデータベース化し、それをインターネット上に公開していくこと。


14.(随意契約の縮小 仕様書・見積書の改善)
 随意契約を縮小する方針を打ち出すこと。また、仕様書については積算に必要な仕様を詳しく明記するようにし、受け取る見積書についても、必要事項を詳しく記載させるよう改善すること。
  • 私が当選して、とくに驚いたのが、区の契約、とくに仕様書や見積書のいい加減さです。具体的には、議会やこのコーナーでも、区が5年に一回行っている「広域商業診断」について指摘したことがあります(たとえば、こちらなど)。

15.(職員給与のあり方の改変)
 職員給与のあり方については、23区横並びの対応をやめるべく研究・検討を進めること。
  • 人件費のあり方については、今後、民間の実態に近い給与改定を行うべきです。また、とくに能力・実績に応じた給与制度、高齢職員の昇給停止等について研究・検討をすすめるべきです。なお、特別区人事委員会なる組織は、東京23区が都の内部団体でなくなった今となっては、その存在そのものが理解しがたく、解消する方向で動き出す必要があると考えます。

16.(職員採用のあり方の検討)
 長期的視点に立った常勤職員採用のあり方について研究・検討を進め、採用を行うこと。とくに「新規採用の抑制+中途採用の拡大」をセットで検討されたい。
  • 組織の活性化を図る点で新規採用の抑制は好ましくないことですが、区財政の現状は実に厳しいものがあります。団塊の世代が退職するまでは、一時的な採用ゼロも検討すべきです。問題となる「世代の断絶」については、その後しかるべき時に中途採用を実施するなど、長期的視点に立った対応を検討し、対処していくべきでしょう。

17.(職員倫理の向上)
 国家公務員倫理法を見習い、職員に厳しい倫理規定を設けること


18.(外部監査制度・パブリックコメント制度・オンブズマン制度・住民投票制度の創設)
 外部監査制度・パブリックコメントの制度化・オンブズマン制度・住民投票制度等々を早期に実現し、行政の公正な執行を図ること。
  • 外部監査制度については、検討していく旨の答弁を得ています。期待しています(こちら)>区長殿。オンブズマン制度については、役所や議会での評判が悪く、全く検討されていません・・・(こちら

19.(電子区役所の実現と情報公開制度の改善)
 情報化を推進し、データの共有化・電子データ化を進め、それを事務事業の効率化につなげていくこと。

 国が電子政府を実現するのは2003年を公約していることもあり、どんなに遅くなっても、5年以内には、区も相応の電子区役所の実現を図ること。

 また、これにあわせて個人情報保護条例も前向きな改正を行うこと(▲詳細はこちらなど)。


20.(一部事務組合のあり方の改善)
 特別区協議会、清掃一部事務組合、人事・厚生事務組合、競馬組合、国保連等の運営・経営状況についてもチェックを進め、区の分担金を減らすことができるよう尽力すること。


21.(医療費・不正請求の根絶 医療情報の公開推進)
 国民健康保険会計の健全化を図るためにも、医療費・不正請求の根絶をめざし、医療費・通知内容の充実を図るなど、これまでにない対策を進めていくこと。

 また、区民に対してはレセプト開示を推奨するとともに、医療機関に対しても、患者に明細書を発行するよう強く要請していくこと

 なお、より開示請求しやすくなるよう個人情報保護条例を改正すること=前掲 ▲詳細はこちらなど)。


22.(住宅施策のあり方の再検討)
 住宅施策のあり方について再検討すること。とくに福祉施策とはいい難い区民住宅については、早期に廃止すること。
  • 中間層向け区民住宅は、現在区内に59戸。これは、都営・区営住宅などと違い、いわゆる社会的弱者対策ではありません。福祉施策がさまざまカットされていることを考えれば、本来は早く廃止するべきです。契約期間内に廃止するとなると、さまざま難しい問題もあるでしょうが、他の政策との整合性を考えれば、何らかの対策は必要です。

23.(区営バスの健全経営)
 区営南北バス(すぎ丸)について。赤字幅が規定より大きく拡大した場合には「廃止することもあり得る」と明確に打ち出すこと。むしろ、それを以て利用の拡大を促し、黒字化を目指すこと。



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 今後の予算編成にモノ申す!(その2)

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