杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.54



 国民健康保険 と レセプト 

将来の医療費や保険料を抑えるために努力すべきこと 

 
 今回の定例会の一般質問で、私は、国民健康保険を題材にした話題を取り上げています。いずれ東京23区統一保険料の制度も廃止される可能性が濃厚なことから、その日に備え、杉並区でも、保険料を安くするためにはどうするべきか、そろそろしっかり考えていかなければならないことです。


 たしかに医療費の削減は簡単ではないが・・・

  日本の医療費は伸びる一方。現在の総医療費は約30兆円。ちなみに一年間の国税収入がy約50兆円(平成10年度)であったことを考えれば、これがいかに大きな額であるかおわかりいただけると思います。医療保険改革を行わず、このままの状態では、2010年には現在の倍近くの医療費負担が必要になると言われています。

 すでに、懸念は現実のものとなっており、東京23区の国民健康保険料も、この数年、恐ろしい勢いでアップしています。

※昭和の末と比べた保険料は、すでに2倍近くに上昇しています(形式上ですが、均等割については2倍を越え、所得割については1.8倍のアップとなっています)。別途限度額が定められていますし、負担額の実態に個人差があることは言うまでもありませんが、形式上とはいえ、バブル絶頂期の2倍額近い保険料負担があるというのは、とてもマトモな状態ではありません。このため、国保の収納率は89%台(平成10年度。なお、滞納世帯数は20%超)に落ち込んでおり、払えない・払わないという人も急増しています。

 このように、国保財政は危機的な状況。国民健康保険についても例外とすることなく、経営感覚を発揮して、今後少しでも負担が軽くなるように努力する必要があります。

 ところが、これまでの区の説明は、「法律で定められていることだから、これ以上の効率化を行うことは無理」といった趣旨のもの。だから、区の支出を20%削減するという区長の公約でも、国民健康保険については例外(聖域)としており、公約の対象外(だから、どんどん保険料がアップしても仕方ない)というわけです。もちろん、説明としては一理あるのですが、だからといって、区はこれ以上努力できないとか、国の医療保険制度改革を待望しているだけという態度なのは、困ったものです。杉並区や保険の加入者(=私たちですね)は、これ以上、本当に何も努力することができないものなのでしょうか? 

 明細を知らないまま支払わされる医療費

 病院や診療所に行ったときの領収書を見てみてください。改めてみてみると、発行されている領収書の曖昧さがわかると思います。それでも領収書に診察料とか検査料と書いてある病院は相当親切な病院であって、大抵は金額○○円といった程度のことしか書かれていません。それでも、まだマシな状況になったという人もいます。その昔は、領収書をくれといったらイヤな顔をされたそうですから・・・

 通常、買い物に行って商品を買えば、何がいくらの金額なのかレシート(明細)を渡すのが常識というものです。むしろ、明細のわからない請求に対して「言い値」で金を払えといわれたら、イヤな気持ちになるのが普通ではないでしょうか。ところが、それが通用してしまうのが医療の世界なのです。

 不思議なもので、医療の世界は、
受けた医療の明細が書かれたレシート(レセプト)をそのまま渡さないという類い希な業界。窓口でもらえるのは、通常、金額が書かれた領収書ぐらいであって、その結果、私たちは、どのような病気でどのような診療を受けたのか、またどのような治療にいくらの費用がかかっているのかなど、医師に口頭で問いたださなければ、その詳細を知る手だてがないような状況におかれています。

 なによりも、
こうして患者が明細を容易に入手することができない結果、医療機関による医療費の不正請求は、後を絶たない現状です(架空請求・過剰請求・二重請求など)。大きな事件では、大阪の安田病院グループによる25億円もの不正請求事件が有名ですし、東京でも新宿区のガン検診が発端となって発生した不正請求から医療費返還訴訟が起こっているなど、密かに大きな問題になっています。


 あとを絶たない不正請求 支払いの3割が不正請求とも?!

 国民健康保険の場合、自己負担は3割。残りの7割は保険から支払われます。お医者様が、その残りの7割分の医療費を請求するときに提出する書類にレセプト(診療報酬明細書)という書類があります。

 レセプトは、レシートと同じ性格を持つものです。レセプトを見れば、受けた医療の内容や値段、処方された薬の名前、受診した月日等々、すべて理解できるようになっています。
 
 岩波書店から発行されている雑誌「世界」が、1997年9・10月号に「医療費値上げの前に必要なこと」という記事を載せてからというもの、マスコミで医療費に関する問題が大きく取り上げられるようになっています。こうした文献などによれば、保険医療費の3割程度が不正請求であるとか、歯科の場合にはさらにひどく5割程度が不正請求ではないかなど、複数の現役の指導医療官らが、そう証言していると指摘されています。かりに30%が不正請求だとしたら、9兆円もの壮大なムダな医療費を支出していることになります。これは、東京都の1年間の財政規模(一般会計)ですら、はるかに上回る莫大な額なのです。


 不正請求の摘発に必要なもの

 こうした不正請求を摘発するために、区は国保連に審査を委託したり、独自に医療事務経験者などを嘱託として雇うなど、熱心にレセプトの内容点検が行われています。しかし、実際には、あまりにも膨大なレセプト審査は、まともには行えないのが実情です。とくに、書類上、形式的な誤りのない不正請求の場合は、書類審査だけで不正を見抜くことは100%不可能であり、実際に医療を受けた本人に問い合わせないことには、不正があったどうかも分からないというのが現実です。

 ひどい例では、病院に行ってもいないのに受診したことになっている、というような架空の請求もあるわけです。いわば最近話題のクレジットカード詐欺(他人のカード番号を使って不正利用し、本人には知らない請求がきてビックリするというもの。最近、芸能人が被害に遭って有名になった)と同様で、本人の保険証の番号さえわかれば、いとも簡単に架空の請求ができてしまうのです。

 クレジットカードの請求書なら、本人に明細が渡されますから、不正請求の有無を確認することができます。しかし、医療費の不正請求(架空請求)の場合は、本人にそれが知らされないのですから、言ってみれば「やりたい放題」になっているわけです。とくに、こうした架空請求の場合、いくら書類審査をしても、不正があるかどうかなど、絶対にわかるわけがありません。患者本人に、その日受診したかのどうか、またどのような診療を受けたのか聴いてみないことには、絶対に摘発できないものなのですが、残念ながら、現在のレセプト点検は、書類審査のみであり、こうした聞き取り調査は行われていません。


 レセプトは誰のもの?

 もっとも、医師にすれば、病名告知の問題など、いろいろ配慮すべき点があるといい、開示に消極的でした。しかし、厚生省の通知では「病名を知ってもかまわない」という本人の意思さえはっきりしていれば、その明細(レセプト)を開示しなければならないことになっています。

 そうでなくとも、保険制度というのは、そもそも自己責任を原則とするものであって、お金を払っている者に、その内訳や明細を文書で示さないという非常識なあり方は、改善していくべきです。具体的には、厚生省の通知に基づいて、区が積極的にレセプトの開示ができる旨、加入者に知らせていくとともに、レセプトの読み方など、医療教育にも力を入れていくべきです。

 国保加入者の経営参画 レセプト開示を容易にすべき

 最近では、コンピュータも普及し、形式的なミスのない不正請求をすることが容易になっているようです。特定の傷病名をコンピュータに入力すると、それに対応する診療行為がキー一つ叩くだけでたちどころにリストアップされる・・・というように、お医者様にとって、実に便利なコンピュータ・ソフトが存在するそうです。かつては、カルテの内容とレセプトとで辻褄が合わず、不正請求が発覚するということがあったそうですが、現在ではこうした背景から、患者に直接聴かなければ、ますます第三者が不正を見抜くことは困難になってきています。

 このように、適切な審査を行うためには、医療を受けた本人がレセプト審査に参加できるようにしていくべきです。民間保険では、加入者すべてが社員という相互会社の形態があります。国保もいま一度同じ考えに立って、加入者の経営参画を進めることが必要だと考えます。具体的には、

@レセプトを容易に入手できるようにすること
 現在は非常に面倒。しかも公開されることも、ほとんど広報してこなかったため、過去3年間に開示されたレセプトはたった5件しかありませんでした。個人情報の管理にうるさい金融機関ですらインターネット取引できる時代に、レセプトの郵送請求すらできず、わざわざ窓口に本人が来いという時代錯誤は早く改善すべきです(=個人情報保護条例の改正)

A医療費通知のあり方を再検討すること
 現在は年2回・5月分と9月分が通知されますが(杉並区の場合)、そこには受診した医療機関名とただ金額が書いてあるだけ、明細は不明です。また、そこには個人的な問い合わせを受け付けないかのような記載がある一方、条例で可能になっているレセプト開示についてはいっさい説明がなく、あまり親切な通知とはいえないのです。郵送料等に影響のない範囲で、可能なかぎり、通知範囲を拡大していくべきです。

B保健事業の一環として、「医療に関する消費者教育」を行うこと
 保講座や保講座、レセプトの読み方講座などを開催し、知識の啓発に努めるべきです。とくに、これからは自己責任が重視される時代。受けた医療の内容がわからない、というような加入者を減らすことは、保険を運営している側にとっても、大きなメリットがあるはずです。保健事業の一環として、国保では、夏になると区民向けに保養所を借り上げたりしていますが、たまに保養すれば健康が維持できるというものでもないでしょう。こうした「一過性の消費」に予算を計上するのもいいのですが、啓発された医療消費者を育成することも、同じように真剣に取り組んでいくべきだと考えます。

C架空請求をはじめとした不正な請求を発見した者に対して、何らかのインセンティブを与えることを検討すること(報奨金の支給など)

D保険財政の実情を説明・審議する機会をきちんと広報すること
 たとえば、これまでは国保の運営協議会がいつ開かれているか、一般区民にはまるで知らされていません。もちろん、議員である私のところにも案内がきたことはなく、こちらが担当に聴かないことには、いつ開かれているか知る術もありませんでした


 長々書きましたが、簡単に言えば、@民間の経営感覚を国保にも導入すべきこと、A国保においても「区民との協働」ないし区民参加を進めることが必要だといいたいわけです。ここで指摘したことの多くは、区レベルでも実行が可能なはずです。

 民間の任意保険の場合、経営の危ない保険ということになれば、自主的に解約するなど、個人的にリスクを回避することができます。しかし、国民健康保険は強制保険である以上、そうもいかないのです。区は説明責任を果たし、一方で加入者である区民も、もっと当事者としての自覚をもっていかなければ、根本的な解決を図ることはできないはずです。

 将来的には、病院の窓口でも開示されるように

 もちろん、レセプトを容易に入手できるようにしたからといって、すぐに効果が出るものではないでしょう。しかし、患者のもとに日常的にレセプトが渡ることを思えば、少しは不正請求も減ることでしょう。なんでもそうですが、「見られる」ことに対するプレッシャーは相当なものだと思います。すでに、薬に関する関心の高さや医薬分業の影響もあって、積極的に薬の説明書を渡す薬局も出てきました。関心が高まれば、なんでも無視できないのは、この世界も同じだと思います(もっとも、説明書の発行にも、保険負担・患者負担があります)。

 また、医療関係者にしても、これまで医療保険制度のひずみ(技術料の評価の低さなど)に泣かされてきたところがあります。その結果、真面目にやっていたのでは、カネにならないということで、過剰診療などに手を染めることがあったのかもしれません。レセプトを開示することによって、このひずみが区民にも明らかになれば、その改善の必要性が一般にも理解されていく好機となるかもしれません。

 このように、レセプト開示が進むことで得られるものは多く、今後、これを奨励することは、必要不可欠です。将来的には、病院の窓口でお金を払ったときに、レセプト相当の明細書を一緒に渡すことができるようにすべきです。なお、カルテについても同様に考えるべきだと思います。


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