◆3◆ 「その他の」と書かれてあった場合は要注意
このように、単に「その他」と書かれてある場合は、普通に(1)(2)を並列的に(対等に)読めばいいのだが、「その他の」と書かれてある場合は要注意だ。
そのことを知らないまま読んでしまうと、複雑な条文を正確に読みこなすことができなくなってしまうのである。
◆ 杉並区議会会議規則(平成20年10月10日改正)の場合
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(欠席の届出)
第11条 議員が疾病、出産その他の事故のため出席できないときは、その理由を付けて、当日の開議時刻前に議長に届け出なければならない。 |
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- (参考・旧条文) 旧第11条
議員が事故のため出席できないときは、その理由を付けて、当日の開議時刻前に議長に届出なければならない。
この場合、「その他の」とあるので、「事故」の具体例として、疾病や出産があることになる。この条文を適用すると、議員の出産は「事故」扱いとして処理されるわけである。
だが、現代において、「事故」という言葉の持つニュアンスは、あまりにも悪いものがある。
「事故」は法律上特殊な意味をもつ言葉だが、実際には非常に悪いイメージが定着しており、もっぱら悪い意味で多用されているのが現実である。別の言葉に置き換えられるのであれば、別の言葉に置き換えたほうがよいと思うのだ。
議会には少子化を問題視する方が多い。そうだとしたら、出産を「事故」扱いすることも、もうそろそろ止めるべきだろう。出産という慶事に相応しくないニュアンスの言葉を敢えて使う必要はないというべきである。
◆ 出産そのものは慶事
どのような理由があれ、出産そのものは慶事だ。出産という慶事を「事故」扱いとして処理するのは、少子化時代にそぐわない。
横浜市議会などでは、このような「事故」扱いをやめており、会議規則には「疾病、出産その他の事由」と表記されるようになっている(横浜市会会議規則 第2条/なお、「事由」とは理由または原因となっている「事実」をいう)。
おそらく横浜にも私と同じ問題意識を持つ議員がいたのだろうと思う。
医療技術が進歩したとはいえ、出産には依然といしてリスクがある。言霊(コトダマ)と言えばそれまでだが、「事故」扱いするなど、縁起でもないことだろう。出産事故という言葉もあるが、これまた良い意味で使われることはない。
この点、法律用語としての「事故」には、日常用語とは違う意味もあるから別に問題はないと開き直ってしまうことも可能かもしれない。だが、「その他の事故」という部分を他の表現に代えることは別に難しいことではないのだから、あえてこの縁起の悪い言い回しに拘ることはないはずなのだ。
感じ方の違いといえば、それまでだが、私は出産のような慶事を「事故」扱いとして処理する気にはなれない。この少子化時代、そこにどんな理由があれ、生命の誕生という「慶事」に配慮した表現に改めるべきと思う。(次のページへ)
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