杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線2004



忘れられた「年金問題の核心」
政治家の未納問題だけで話題を終わりにしないために
2004年5月
   1.はじめに

 とにかく「年金」が話題である。とくに有力政治家の未納に注目が集まっている。

 しかし、その影響で、年金問題で最も重要な論点が全く報道されなくなってしまった。本当に困ったことだと思う。(参考までに、私は年金を完納している)


 たしかに、政治家の未納問題も重要とは思う。だが、年金問題の核心は、「公的年金の債務超過をどうするか」「年金利権をどう整理するか」であり、本来はここを大きく話題しなければならないはずなのだ。

たとえば、年金資金運用の失敗は「兆」の単位の話である。さらに、年金の債務超過は、約600兆円(国民一人あたりにすれば500万円)にも及んでいる大きな問題なのである。

  (1)  年金の現状

  1. 公的年金は債務超過に陥っている(※約600兆円)
  1. しかし、保険料そのものを引き上げると、とくに自営業者や若年層の年金離れ(支払不能や支払拒否)が、さらに加速してしまう(未納が増えれば、制度が維持できなくなる)。
  1. したがって、増税をするか、年金カットをするか、その中間でバランスを取るか、いずれかを選択しなければならない。
※高山憲之一橋大教授の試算。この債務超過は、基本的には、最近の少子化とは別問題のもの。たしかに、最近の少子化は、40代以下の年金の懸念材料であることは間違いないが、本来的には現在50代以上の年金債務にはほとんど無関係の話だったはずである(そのために積立金があったはずなのだから)。この意味で、この債務超過は、長きにわたって実態にあった制度改正を避けてきたことで発生したものと考えるべき・・・という高山教授の指摘は、真摯に受け止めなければならないと思う。

 これに対して、今回の年金改正は、簡単に言えばこういうことである。

 (2) 今回の年金改正

  1. まず、保険料を引き上げる。国庫負担(税投入)の割合も増やすことになったものの、財源は曖昧なまま(最初に所得税増税→その後の抜本的な税制改正は平成19年度=2007年に先送り)
  1. つまり、過去分の債務超過は、専ら現役世代(団塊の世代を含まない)の負担で賄うことになる可能性が大きい。
  1. したがって、保険料を引き上げても、40代以下の世代にとってみれば、引き上げられた保険料が自分たちの将来の年金を賄う財源に使われない以上、未納者は後を絶たないと思われる。
  1. 年金官僚は、この期に及んでも「利権」を手放そうとせず、積立金の悪用を続けようとしている。(年金官僚による年金資金運用は、日本社会全体を歪めていると言っても過言ではない)


 このように、今回の改正では、単純な未納問題を解決することはできない。すぐに制度は行き詰まってしまうだろう。

 (3) 堀部は現時点ではこう考える

  1. もはや「保険料」の引き上げで対応することは無理である。
  1. 未納問題を解決するために、国民年金(基礎年金部分)の保険方式を「税方式」に改める。財源は主に消費税(要インボイス)+住民税(均等割)。
  1. 国は基礎年金を保障することだけを仕事にし、それを超える部分の年金資金の運用は、個々の国民の自主性に委ねる形に移行する(日本型401kを拡大)。
  1. これによって、年金官僚が半ば自由に使っている積立金は、一部準備金を残したうえで、解消していく。
  1. 公的負担を際限なく引き上げれば、日本経済の国際競争力は低下する。これでは税収はさらに低下し、社会保障は維持できない。このため、好むと好まざるとにかかわらず、年金(関係の公務員および関連公的部門)は縮小せざるを得ない。
  1. なお、自営業者を含めた完全な「年金一元化」を導入するつもりなら、納税者番号制の導入を議論せざるを得ないはずである。これなしで実施できるわけがない。


 年金問題は、国民的関心事であるので、ごく簡単に私見を述べた。次から問題点を詳しく考えてみていきたい。国民負担を上げる前に、変えなければならないことが数多くあることがわかる。





1.はじめに 【本稿】
2.年金資金の運用損
3.「国が年金資金で株を買う」ことの意味
4.国が株主になると、どうなるか?
5.どうする不良債権
6.官僚のための「国営保険会社」は廃止すべき
7.公的年金は賦課方式か税方式で あとは401kに
8.年金資金運用と「政官業の癒着」
9.これで年金改革を終わりにさせないために


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