杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし
  そんなあなたの素朴な疑問(その1)

「杉並病」とは? 2000年1月(9月再編集)


 いわゆる「杉並病」とは、東京都清掃局・杉並中継所の周辺で発生している健康被害のことを指します。ただ、杉並区はこの問題を「井草森公園周辺環境問題」と表現し、東京都は「杉並中継所周辺環境問題」と表現しているというように、用語は統一されていません。また、医学的にも杉並病という病気があるわけではありません。

 
東京都清掃局がつくった杉並中継所


 杉並中継所は、不燃ゴミの中継・圧縮を行う施設として、平成8年に操業を開始しています。小さな清掃車で収集したすべてのゴミを最終処分場まで運ぶことは、交通量の増加につながり、環境悪化と交通渋滞のもとでもあることから、東京都の清掃局は都内数カ所に中継所を設置しています。そして、清掃車9台分の不燃ゴミを中継所で約半分に圧縮し、それを最終処分場に運んでいるわけです。
 
東京23区の清掃事業は、これまで各区ではなく東京都が行っていました。今年4月より各区に移管されましたが、この問題の責任の所在もまた移管されてきたわけです。


 しかし、不燃ゴミといっても、その種類は千差万別です。なかには「まぜるな危険」という表示のあるものも一緒に圧縮されてしまいます。当然、危険なものも、みな一緒に混ざってしまうことになります。ゴミの最終処分場(埋め立て地)やゴミの不法投棄現場に行ってみると、恐ろしいような異臭が漂っていることがありますが、ゴミを強く圧縮することで、異臭騒ぎや健康被害が起きるのは、何ら不思議なことではないのです(なお、これだけでなく、とくに杉並中継所は、その設計にも問題があり、健康被害が深刻になったとの見解が有力です)。
ちなみに、杉並区の隣の武蔵野市にある中継所では、わざわざプラスチックを分別して処理しているという。日本最大の中継所をもつ神奈川県でも、プラスチックを可燃ごみ扱いしてきた歴史もあって、それが中継所に混入する可能性は少ないのだという。東京都(23区)も、中継所のあり方を再検討しなければならないことだけは確かである。ただ、中継所のあり方も問題だが、それをいうなら、ゴミを出す側にも問題があることを忘れてはならないだろう。

  「杉並病」の現在


 杉並中継所周辺は、閑静で平穏な住宅街です。それが杉並中継所の操業とほぼ同時期から、原因不明の体調不調者が続出し、化学物質過敏症と思われる症例の患者が続々と報告されるようになったわけです。しかも、そのうちの多くは、中継所周辺地域を離れると症状が治まることもあり、すでに区外に引越していかれた方も、少なからず存在しています。ただ、残念ながら、この症状は、花粉症などと同じように、全く同じ大気を吸って生活していても、症状の出ていない人には、まるで理解できないものなのです。このことが、この問題を非常に複雑にしているのです。

 こうした状態が、かれこれ4年にも渡って続いています。行政の見解は「杉並中継所が杉並病の原因であるという科学的証拠は出ていない」というものです。しかし、これについては、都の情報隠しなどもあり、真実は闇の中ともいえるため、現在、私も都に明確な情報開示を求めているところです。しかし、なによりも重要なことは、原因究明や責任追及よりも、被害の拡大を防ぐことにあります。かつての水俣病は、科学的裏づけをとっている間に状況が悪化し、被害が拡大してしまいました。この水俣病と同じ過ちを犯すことだけは、避けなければならないのです。

※追記1999年
 なお、区議会では、1999年秋に、私をはじめとした10人の議員が杉並中継所を一時操業停止して原因調査をするよう求める意見書を本会議に提出し、多数の賛同を得るなかで可決されました。
 一部の住民代表は、国の公害等調整委員会に健康被害が杉並中継所によるものだということを主張し、原因裁定の申し出をしています(審理中)。


※追記2000年
 2000年3月31日 都の調査委員会が、一定の結論をまとめましたが、その内容には問題も多く、疑問が残る内容でした。その詳細は、2000年4月第1週報告「杉並病」 まだ疑問は解決していない! 都調査委の報告に異議ありに記載しています。

なお、堀部やすしは、この問題(環境調査に関する点)について、監査請求を起こしましたが、現在では、その趣旨が杉並区で受け入れられ、調査データの扱い方が変更されることになりました。詳細は、2000年4月第3週報告「杉並病」監査請求その後 今後は適切な契約を行うなど進展が! で報告しています。

※追記2000年9月
 その後、杉並区長は、10年以内に中継所を廃止する方針を打ち出しました。区長が解決する期限を明示したことについては評価したいと思いますが、その説明には矛盾があり、ツジツマの合わない部分もあります(週間報告の6月3週 6月4週を参照のこと)。また、9月には、全国に先駆けて、レジ袋税構想を提案し、実効性のあるゴミ減量策を提案しました。これらの問題点については、以下に論点をまとめています。

●2000年6月第3週報告
 (杉並病 中継所廃止への道のりを考える・その1)
 それでは杉並中継所の廃止はできない!区長発言の矛盾を検証する 
●2000年6月第4週報告 (杉並病 中継所廃止への道のりを考える・その2)
 杉並病をなくすために必要なこと
●2000年9月第1週報告
 杉並区の「レジ袋税」構想を考える その論点