杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2001

学校給食調理を考える (全4回シリーズ・その4)
9月から区内3校で民間調理を実施

 学校給食調理を考える(その1)・(その2)・(その3)のつづきです。

 民間の活用には賛成。ただし、年度途中からの業務委託には整合性がない

 さて、前述したように、一度は4月から民間活用を行う方針が決定されたものの、実際には組合の納得が得られず、その実施は9月に延期されてしまいました。

 しかし、これでは効果をあげることができません。中途半端に年度途中からスタートするくらいなら、来年4月実施にしたほうが出費は抑えられますし、人事のあり方や職員の定数管理のあり方からも、年度途中からの業務委託の開始には整合性がなく、説得力がありません。

 何度も言いますが、法的に常勤公務員を解雇できず、大幅な給料カットもできない以上、削減効果をあげるには退職者・転職者分を補充しない(=新規採用しない)しか方法がありません。

 業務委託をしても、そこにいた公務員を削減せずに雇用したままというのでは、効果を上げられないのは当然です(区は役所内転職=配置転換を検討)。

 だからこそ、公務員の定数管理は、4月に年間の動静を見定め、せめて年度内においては定数の整合性がとれるようにしておかなければならないのです。だいたい年度内のある時期に、突然急に遊休人員が増えるということがあっては、困るのです。

 民間のように、解雇・配転が柔軟にできれば、年度途中でも「真の経費削減」が可能でしょう。しかし、法の制約の強い現在の役所では、それはかなり無理のある話といえます。


 民間と異なり、区職員の定年は3月一律

 お役所において、年度途中から業務委託を実施するということは、要するに、年度途中で働いている常勤職員の一部を「給食現場以外に移動させる」ということです。

 民間と異なり、公務員の場合、定年退職者が出るのは3月だけです。つまり、3月までは全体の人員にほとんど変化はありません。

 つまり、年度途中から新たに業務委託するということは、いま働いている常勤職員を別の部署に移動させることが必要であり、さらに年度途中からの委託経費も新たに必要になる・・・ということなのです。年度途中で人件費がカットできないうえ、新たな経費も必要というのでは、意味がないはずです。

 調理業務の民間活用は進めるべきと思いますが、それは整合性のとれる4月実施ならばこそ、納得できる話です。今回のように、年度途中から導入することは、こと公務が常に「年度」を区切りに定数管理している以上、説得力がないといえます。

 このように、すでに現在の体制で動き出してしまった以上、年度途中からの実施は、年度内における全体的な整合性に欠けると言わざるを得ず、民間活用に賛成である私の立場からみても、9月実施にはあまり正当性があるとは思えないのです。


 9月から実施へ

 公務員は、制度上、解雇ができないからこそ、年間を通じて整合性のある人事管理が必要です。年度途中で新規雇用や新規委託を実施する場合は、年度途中から新たな仕事が増えた場合のみでなければ、説得力がありません。

 年度内において、新たな財政支出を伴う不必要な選択は避けるべき。4月に現行通りのスタートを切ってしまった以上、もう年度内に整合性をとって経費の削減を行うことは不可能になっており、今年9月から業務委託をスタートさせても、年度内の経費削減効果はゼロなのですが・・・

 それでも最終的に区は9月実施を決定しました(高円寺中・天沼中・桃井第5小)。民間活用に賛成の立場の私の目から見ても・・・単年度の決算としては、これは間違いだと思います。

 今回の4回シリーズのなかで述べてきたように、「公務員法制度の特殊事情」を踏まえれば、退職者の動きを見定めながら来年4月に業務委委託をスタートする(=職員の配置転換を行う)という方法のほうが、短期でも中長期でも、トータルでの経費削減額が上回ることは間違いないのです。

 なお、来年4月からは、以前より主張してきた「学校選択制」が実現します。これによって民間調理に不安や異論のある者に対しては、業務委託を実施していない学校を選択できる余地が与えられるのです(杉並の場合は、人口密度も高く、周辺の学校を選択した場合であっても、歩いて通うことができる場合も多い)。

 つまり、どうしても導入期の初期不安が拭えない一部の区民に対しても、「選択の余地」を与えることで、当面の配慮をすることもできたはずなのです。こうした二重の意味で、今回の9月実施という選択は、最善とはいえないものです。

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 ただ、繰り返しになりますが、長期的視点に立ってみれば、今回の改革は必要なもの。単年度の決算や導入のタイミングは合理的ではありませんので、納得できない部分もありますが、民間活用そのものは必要と判断しています。その理由は、(その1)以降、さんざん述べてきたとおりです。

 新しいことをやろうとすれば、必ず大きな反対にあうものですが、実際に足立区や台東区では、全校で業務委託されており、むしろ「民間でない地域があるなんて!」と、向こうの方が逆に杉並の状況に驚かれたという報告もありました。時間が経過し、民間に問題がなければ、理解も拡がっていくことと思います。

 公務員にとって、民間の風が入り込むことは、面倒な仕事が増えるだけで、苦痛かもしれません。しかし、現在のお役所は、子どもの世代から借金をしてやっと運営しているような財政状況なのです。現役世代の借金は、現役世代が返済のメドをつけるべきなのであり、本当に親が子のためを思うなら、我が子に借財ばかりを残すような政策を選択しつづけるべきではないはずです。
 

 今後の課題

 なお、今回の問題について、とくに私が重視し、提起した問題は、(1)今後のNPOの活用に大きく道を拓くべき、(2)談合の温床になりかねない過度の参入規制は撤廃すべき、(3)契約にあたっては、あくまで一般競争入札に基づいた総合評価方式を原則として徹底すべき・・・という3点。改善すべき点として今後改めて主張していきたいと思います。

   学校給食調理を考える (その1)学校給食の実態を検証する
                  (その2)談合の温床・参入規制は撤廃すべきだ
                  (その3)必ずしも常識ではない給食の提供

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