杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 11月4 No.76

行政計画(10ヶ年計画)にみる 今後の杉並
(その3)みどり・環境・教育/編

 前回に引き続き、新しい行政計画の概要をみていきましょう。前回は、No.74(その1)/No.75(その2)へ。また、財政計画や行革方針についての論評は、No.83 No.84(予定)へ

 今回は、(1)基本計画(10ヶ年計画)と、(2)実施計画(3ヶ年計画)のうち、以下をテーマに取り上げます(なお、分類は堀部による。なお、取り上げているのは主に新規事業)。

(8) 今後のみどり・環境保全

 「杉並病」騒ぎなど、複雑な環境問題を抱える杉並区では、風評被害から、一部の地域で不動産価値が低下するという事態になっています。これを払拭し、地域イメージの回復を図る意味でも、環境保全やゴミ問題への取り組みは重要。区でも、ISO14001の認証取得をはじめ、多くの施策が計画されています。

 なお、今年に入って、区長は、10年以内に杉並中継所(不燃ゴミの圧縮中継施設)を廃止したいとの目標を掲げました(今回の計画中には、なぜか明記されていませんが)。今回の計画では、さっそく来年よりプラスチック類の分別回収(モデル回収事業)をスタートさせることが決まりました。

 プラスチック類は、不燃ゴミの大半を占めるもの。これを半減させることができれば、杉並中継所も不要になります。こうして10年以内に杉並中継所を廃止するというのが、山田区長が昨年公表した目標。新聞報道によれば、山田区長は、3期12年で区長を辞めると公言したそうですので、これが区長に対する評価の別れめとなることでしょう。

 とはいえ、今年、区が予算計上していた分別回収事業(蛍光管や乾電池)が、諸般の事情からさっそく実施できなくなっているように、すでに、この問題に対する区長の姿勢を疑問視する向きもあります。

 たしかに、議会の承認を経て、正式に組まれた予算を全く未執行にしているのは、それはそれで問題かもしれません。しかし、分別回収が進んでいる自治体でも、ゴミの出し方が悪く、分別回収がほとんど意味をなしていないとの指摘もあります。行政を責めるだけではなく、自らのライフスタイルを見直し、反省することも同じように大事なこと。新しくエコ・スタッフ(環境配慮行動推進員)の制度がスタートしますが(平成14年度)、ゴミ問題は、分別回収やリサイクルに協力すれば、それで解決できるほど、単純な問題ではないはずです。

 この意味では、強力な手段で区民の意識喚起を図らなければ、ゴミ問題の解決が遠いのも現実。課題が多く残っている「レジ袋税」構想(続考No.79予定)についても、なんとか論点を整理したうえで、早期に成案をまとめるべき(まとまらないなら、対案を検討すべき)であると考えています。

 このほか、みどりの保全・育成を図るために、改めて平成30年までに緑被率を20%にするという大目標を表明しました。当面は、屋上緑化が中心となると思いますが、平成13年度には、「みどりの基本計画」を見直すとともに、14年度には、「みどりの基金」を新設し、対応を進めることになります。


■主な新規計画内容(環境編)
みどりの基金<新設>
 区民や企業などが自主的にみどりの保全や緑化の推進に協力できる制度の一つとして、みどりの基金を創設し、寄付金の積み立てを行い効果的な運用を図る。目標額20億円 
 ■平成14年度(2002) 基金条例の制定。以降積立開始。
みどりを育てる(仮称・「みどりのリーダー制度」の創設=新規)
 まちのみどりを育てるため、みどりの育成協定を推進するとともに、(仮称)みどりのリーダー制度を創設する。また、みどりの講座の開催などの緑化の普及啓発に努める。
 ■平成13年度(2001) (仮称)みどりのリーダー制度創設
みどりを創る(学校ビオトープの設置・校庭の緑地化=新規)
 学校にビオトープの設置や校庭の緑地化を進めるほか、接道部緑化助成や公共施設の緑化を促進し、まちのみどりを創出する。
 ■平成13年度(2001)〜 学校ビオトープの設置・校庭の緑地化(毎年2校)
地域公園の整備<新規>
 区民がみどりの中で憩えるとともに、都市景観や防災性の向上を図るため、地域公園を整備する。
 ■整備目標(平成30年目標):7地域に1〜2園。区民1人当たり 0.66 u 標準規模:10,000〜100,000u ※今回の計画期間内に、興銀グランド跡地(4.3ha)と日産荻窪工場跡地の一部(4ha)に公園が整備される(詳細はこちらへ)。
みどりの基本計画の見直し
 未来に引き継ぐべき区民共有の財産であるみどりの保全と緑化の推進を図り、多様な緑化施策の展開や区民との協働による緑化の取り組みを行うため、社会状況の変化を踏まえ、みどりの基本計画を見直す(平成12年度実施)。
 ■緑被率目標:20%(平成30年)
一般廃棄物処理基本計画の改定
 区の清掃事業の指針となる一般廃棄物処理基本計画について、循環型社会をめざす「21世紀ビジョン」との整合を図り、廃棄物の発生抑制、資源の再利用・リサイクル及びごみの適正処理を促進するため、必要な改定を行う。
 ■平成14年度(2002) 計画改定。
ごみ減量運動の推進(「ごみ会議」の開催=新規)
 行政・事業者・区民が、ごみ問題の解決や循環型社会づくりのために、共に考え、意見交換する「ごみ会議」を開催する。また、マイバッグの普及促進やごみの出し方ルールの周知・徹底を図るとともに、事業者に対しプラスチック容器等の使用を控えるよう働きかけ、ごみ減量を推進する。
資源ごみの分別促進(プラスチック分別モデル回収の実施=新規)
 資源ごみの分別回収を推進するため、ペットボトルの回収拠点を拡充するとともに、容器包装プラスチック回収のモデル事業を実施する。また、びん・缶等の分別回収を徹底する。
 ■平成13〜14年度(2001〜2002) プラスチック分別モデル回収とその検証、平成15年度(2003)以降体制の検討など
資源化施設の整備<新規>
 ごみの減量及びリサイクルの推進のため、ペットボトル及びプラスチック等の分別収集を実施する際に必要となる、選別・圧縮・保管等を行うための資源化施設を整備する(後期計画・平成18〜22年度/2010)。
(仮称)環境・リサイクルセンターの建設<新規>
 環境やリサイクルに関する情報を収集・提供し、区民の環境学習や環境・リサイクルに関する活動を支援するための総合的な拠点施設である(仮称)環境・リサイクルセンターを設置する(平成15年度/2003まで)。
ISO14001の推進<新規>
 ISO14001の認証を区が自ら取得し、率先して環境配慮行動に取り組むとともに、区民・事業者に対してISO14001の普及啓発を図り、その取得を支援する。また、区民等の環境配慮行動に対する表彰を行う。

 ■平成13年度(2001)認証取得予定。
環境学習の推進(杉並環境マップ作成等=新規)
 区民・事業者等の環境学習活動を支援するため、「(仮称)杉並環境マップ」を作成し、環境情報を提供する。また、小中学生等に対する環境教育を充実するほか、従来の環境学習事業の拡充を図るとともに、自然環境実態調査を実施し、その結果を環境学習等に効果的に活用する。

 ■平成13〜14年度(2001〜2002) 自然環境実態調査・杉並環境マップ作成
  平成15年度(2003) 自然ガイドブック作成
エコ・スタッフ制度の創設<新規>
 環境配慮行動に積極的に取り組もうとする区民・事業者を、エコ・スタッフ(環境配慮行動推進員)として登録し、情報提供や意見交換などを行うことを通して、区と協働して環境に配慮した行動を地域のなかに定着させていく。

 ■平成13年度(2001)エコ・スタッフ制度の検討および試行 平成14年度(2002)実施


(9) 今後の教育施策

 学校評議員制度の導入や、全校へのインターネット整備(平成13年度)などが、今回の計画に正式に盛り込まれました。多くの要望が寄せられるなか、苦しい財政運営の中ではありますが、将来を見据えた適切な計画化(優先順位づけ)だと思います。

 教育施策には、多くを望みたいところですが、現状では、まず「学校選択制」を実現することが最優先課題であると考えています。学校選択制は、教育行政を根本から変える第一歩。もちろん、一定の弊害が発生することも認めますが、導入によるプラス面を前向きに評価し、ここは勇気をもって導入するべきであると考えています。

 現場の先生方にはご苦労をおかけしますが、学校も積極的に情報公開に努め、区民のニーズに的確に応えていくために、ぜひとも受け入れていただきたいと思います。

 ただ、この学校選択制については、いまだ導入の見通しが立っていない状況。今回の計画の中にも、まったく盛り込まれませんでした。幸い、今回の計画では、国にならってか(?)、区でも独自に「教育改革アクションプラン」が策定されることになりました(平成13年度)。なんとか今後策定されるアクションプランには学校選択制が盛り込まれるよう、働きかけを強めていかなければならないと考えています。


■主な新規計画内容(教育編)
学校評議員制度の導入<新規>
 家庭・地域・学校が相互に連携・協力し、教育環境を整えていくため、保護者や地域のひとびとが学校の運営に参画できる学校評議員制度を小・中学校全校に導入する。■平成13年度(2001)導入
教育改革アクションプランの策定・推進<新規>
 未来を担う子どもたちが、楽しく学び、思いやりの心とたくましく生きる力を育むことのできる教育を推進するため、杉並の教育を考える懇談会の議論を踏まえ、教育を実践的に改革するアクションプランを策定し、その推進を図る。
 ■平成13年度(2001)策定。
総合学習の充実などによる特色ある学校づくり<新規>
 総合的な学習の時間などのさまざまな活動をとおし、子どもたちが社会や自然とふれあい、体験し、その個性や創造的な能力を伸ばすことのできる、特色ある学校づくりを支援する
 ■平成13年度(2001)施行→平成14年度(2002)実施。
情報教育の推進<新規>
 IT (情報技術)社会に対応した情報教育を推進するため、小・中学校全校でインターネットに接続するとともに、一人1台のパソコンを順次整備する。
■全小・中学校へのインターネット導入 (平成13年度/2001) 
■校内LANの整備(平成17年度/2005まで34校、平成22年度/2010までに全校)
教育施設パソコン室の区民開放<新規>
 区民の情報学習のニーズに応えるとともに、情報格差の解消に資するため、小・中学校全校及び済美教育研究所のパソコン室を地域に開き、有効活用する。
 ■11月より4校で開始。平成13年度以降 毎年4校ずつ実施校を増やす
適応指導教室の充実
 増加傾向にある不登校の子どもたちへの対策として中学校・適応指導教室を増設し、集団生活への適応指導や学習・相談など、学校復帰への援助を行う。
 ■現在1所。平成13年度(2001)1所増=出張所跡地の利用
情緒障害学級の充実
 学習障害(LD)や注意欠陥/多動性障害(ADHD)などの子どものための教育の場として、小学校・情緒障害学級を増設する。
 ■現在2所。平成13年度(2001)1所増。
図書館情報化の推進<新規>
 図書館の情報化を推進し、インターネットを活用して書誌情報の検索などができる、利便性が高い図書館を実現する。
 ■平成13年度(2001) 書誌情報の検索サービス実施
 ■平成14年度(2002) リクエストサービス実施
 ■平成15年度(2003) レファレンスサービス 利用者用パソコンの設置
図書館の建設・整備
 図書館のサービス充実と向上を図り、区民の学習や文化活動を支援するため、地域に2館を目標に図書館を建設・整備する。また、老朽化した図書館を改修する(既出こちらへ)。
生涯学習・スポーツ推進計画の策定・推進<新規>
 区民が学習・スポーツ活動を行うことができる環境を整え、生涯学習・スポーツを地域で推進するため、施策を体系化した計画を策定する。
 ■平成13年度(2001) 検討・策定
生涯学習・スポーツ情報提供の充実 (生涯学習総合ホームページ=新規)
 区民が生涯学習・スポーツに主体的に取り組むために必要な情報を収集・提供する生涯学習総合ホームページを開設する。
 ■平成14年度(2002) 生涯学習総合ホームページの開設



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