杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線
対案なき「多選自粛条例」の廃止は問題である(2)
平成23年(2011年)1月


 実は日本には古くから数多くの立候補制限がある

 多選自粛条例は、多選を禁止していない。あくまで職務を計画的に遂行するよう「目安」を設け、目標に対する説明責任を果たすことを要請したものである。
 もちろん、仮に多選を禁止する条例を制定していたとしても(明確な立候補禁止規定を設けていたとしても)、日本では憲法違反とは言えない現状がある。
 なぜなら、日本の法律には、古くから数多くの立候補制限が存在しており、これらは、いずれも合憲と解釈されてきたからである。
 これらの事例を確認すると、下位規範(法律や条例)で立候補制限を定めることに何ら問題がないことがわかる (なお、政府の第28次地方制度調査会においては、道州制について検討されたが、その際、権限の集中する道州の知事に多選制限を設けることが提案されている)。

 具体例を挙げて確認しておきたい。

【1】 統一地方選挙
    都知事選(都議補選)に立候補すると、市区長選(市区議選)に立候補できない


 まず、日本においては、統一地方選挙に関する法律が四年に一度制定されており、憲法に定めのない立候補制限が毎回ルール化されている事実がある。

 今回も、すでに法律が可決成立しており、4月10日の選挙に立候補した者は、4月24日の選挙に立候補できないと書かれてある。
 具体的には、都知事選(都議会議員補欠選挙)に立候補した者は、その直後の区市町村の選挙(市長・区長・議員選)に立候補できないというルールである。売名やパフォーマンス目的で立候補することを制限する趣旨であると言われている。
 しかし、東京都知事として支持されなかったとしても、市長なら支持するという人は存在することだろう。補欠都議としては支持できないが、区議ならばよいと考える有権者がいても不思議ではないだろう。しかし、実際には立候補することさえできないのである。
 それでも、この法律は国会において毎回のように全会一致で可決されている。このような立候補制限は問題だとの意見は当然あるはずだが、「立候補の自由を奪う多選自粛条例は憲法違反」と言っていた日本共産党でさえ、これには賛成している。

【2】 政党所属の有無による立候補制限

 第2に、政党所属の有無による立候補制限もある。
 政党に加入していない無党派が圧倒的多数を占めているのが日本の現状である。このような中、同じ国民でありながら、政党に所属しなければ、立候補できない比例代表選挙は、一見すると、差別以外の何物でもないように見える。
 民意を最大限に反映することが必要という考え方に立つならば、国民の最大多数である無所属・無党派の立候補を制限するべきではないだろう。
 しかし、これも合憲とされている。
 大統領制型(二元代表制)の地方自治体とは異なり、国会は議院内閣制であるので、このような立候補制限にも正当な理由があるというわけである。
 このように、憲法で認められた参政権・立候補の自由といっても、「正当な理由」がある場合は、下位規範で堂々と制約されているのである。

 このほか、年齢・職業・経歴による制限があるのは、みなさんご存じのとおりだろう。すべて一定の合理性があると説明されているところである。

 このような事例は、他にも数々存在している。そうであるにもかかわらず、なぜ、田中区長は、この条例だけを殊更に問題視したのだろうか。


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