杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 11月3 No.75

行政計画(10ヶ年計画)にみる 今後の杉並
(その2)子育て・介護・福祉保健/編

 前回に引き続き、新しい行政計画の概要をみていきましょう。前回は、No.74(その1) 次回は、No.76(その3)へ。また、財政計画や行革方針についての論評は、No.83 No.84(予定)へ

  今回は、(1)基本計画(10ヶ年計画)と、(2)実施計画(3ヶ年計画)のうち、以下をテーマに取り上げます(なお、分類は堀部による。なお、取り上げているのは主に新規事業)。

(5) 今後の子育て支援

 社会的に子育て支援や就労支援・促進を行うことは必要なことです。ただ、現状は、「カネは使ったが満足度は低い」という状況。現状のあり方をつづけることは、そろそろ限界にきているのかもしれません。(なお、区の子育て支援策や保育料の現状などについては、近く、別にこのコーナーで話題にする予定です=報告No.83を予定)

 カネは使ったが・・・といいうのは、行政のかけている費用。たとえば、手間も人手もかかる行政のゼロ歳児保育は、一人あたり年間620万円超の経費をかけて実施していますが、なかなかサービス供給が追いつかず、まだまだ膨大な待機者を出しつづけている状況です(参考までに、1・2歳児保育の場合の年間経費は一人あたり約300万円)。

 いずれにせよ、たまたま入園できた方だけに一人あたり623万ものサービスを出し、待機者や家庭内で養育している方には、ほとんど何もないという状況は、明らかに不公平。区立幼稚園(7園)の保育園化などを進めながら対応を改善するべきですが、その反面、行政による従来型の施設サービスを中心とした基盤整備を再考する時とも思います。

 実際にも、ゼロ歳児保育一人あたり年額623万円もの費用を計上しても、少子化(出生率)はいっこうに改善されていないわけです(すでに団塊ジュニア世代が出産しだしている時期にもかかわらず、です)。

 また、現在でもサービスの利用者からも不平不満が絶えないこと(さらなる延長保育を求める声や、保育行政に柔軟性がないといったクレームなど)を考えると、現在の方針の延長で施設だけを増やしても、効果があがるとは思えないのです。財政難の現状では、当然、予算は「施設よりも、実際のサービスに」つけることを優先させるべきでしょう。 なかなかハードに予算を回すことができない状況だけに、新たにできる「認証保育所」制度には期待したいと思います)。

 なお、区では、ゼロ歳児保育の受け皿として、家庭福祉員制度の充実・グループ保育制度の実施(保育サービスの公設民営化を視野に入れた対応)をしていく考えを明らかにしています(「スマートすぎなみ計画」による)。どのような具体的サポートをするかにもよりますが、行政の方向性としては、妥当だと思います。

 このほか、とくに経験豊かなシルバー世代のファミリー・サポート・センターへの参加(協力会員)を促すための取り組みを加速させ、対応を進めることも必要だと考えています(ファミリー・サポート・センターについては、こちらへ)。


■主な新規計画内容(子育て支援編)
グループ保育の実施<新規>
 乳幼児保育の需要に応えるため、保育士等の資格を持ったグループが乳幼児の保育に当たるグループ保育を実施する
 ■平成15年度(2003)までに1所→平成22年度(2010)までに累計3所。
駅前保育の実施<新規>
 待機乳児の解消を図るため、保護者の出勤や帰宅に便利な駅近くでの保育を実施する。国が緊急に配分した少子化対策の補助金を使い、平成13年度(2001)中に西荻サービスコーナー跡地に開設する見込。1所のみ。
年末保育の実施<新規>
 年末の保育需要に応えるため、年末保育を実施する。
 ■平成12年度(2000)より実施。
病後児保育の実施<新規>
 子育てと就労の両立支援の一環として、病気回復期にある乳幼児を預かる病後児保育を実施する。
 ■平成14年度(2002)に1所→平成22年度(2010)までに累計2所。
一時保育の実施<新規>
 保育園に入園していない乳幼児の保護者の通院、冠婚葬祭、育児疲れ解消などのために一時保育を実施し、育児の負担や不安を軽減する。
 ■平成13年度中(2001)に5所+平成17年度(2005)までに2所=計7所で実施
児童館の有効活用(子育てサロン)<新規>
 児童館を有効に活用し、乳幼児を持つ保護者の子育てグループの活動の場を提供するとともに、子育て中の親子がつどい、仲間づくりがしやすい環境を整える。
 ■平成13年度(2001)実施。
中・高校生育成事業<新規>
 7つの地域児童館において、児童館の運営や事業について意見を述べたり、自主企画事業を実施する「地域中・高校生委員会」を設置する(平成14年度/2002実施)。
延長保育の充実
 保護者の就労時間の多様化などに伴う保育需要に応えるため、延長保育の実施園を拡大する(おおむね19:30まで)。
 ■平成15年度(2005)までに実施園を3園増。平成22年度(2010)までに6園増(計・区立22園で実施)。なお、平成12年現在、区立16園+私立7園で実施中。

※このほか、後期計画のなかでは、子どもショートステイ事業(現在1所)を平成22年度までに1所増やすことが盛り込まれています。


(6) 今後の高齢化対応・介護支援

 高齢化対応については、とくに介護基盤の整備が大きな課題です。介護保険がスタートしましたが、いまの状態では「保険あって介護なし」。重度(要介護度4や5)であっても、介護保険が使えないというので、手に負えず、仕方なく遠方の病院等に入院する(医療保険を使う)という方が、未だに存在しています。これでは、医療保険と別個に介護保険を創設した意味がありません。区を超える話題になってしまいますが、いうまでもなく本格的な医療制度改革にあたっては、介護保険との整合性を重視した検討を進めるべきです。

 区内でもグループホームの整備など、新しい動きも出てきていますが、そもそもホームヘルプなどを除き、全体として絶対的なサービス量が著しく不足している状況は変わりません。とくに、区で特養ホームに入所するには、2〜3年待ちが常態(平成12年11月現在・待機者700人超)となっているため、改善を求める声は、実に大きなものがあります。

 このサービス不足の状況について、行政はどの程度の負担で、どの程度のサービスを提供していくのか、いつまでも曖昧なままにしておくことはできないはず。年金のあり方を含め、「団塊の世代」が引退する(定年)前に、結論を出しておく必要があります(これも区の範囲を超える部分もあるのですが・・・)。財政状況は厳しく、誰かが負担せずして高福祉を受けることはできないことを踏まえたうえで、よく議論していく必要があると考えます。

 福祉オンブズマン制度については、検討対象になりませんでしたが、「利用者保護の仕組みづくり」と銘打って、新しい仕組みをつくることが模索されることになりました。もちろん、繰り返し主張しているように、福祉オンブズマンの設置が理想ですが、この際は次善の策であっても、なんとか一歩前進したいものです。とくに、介護保険の要介護認定について、基準の不明確さ・認定のばらつきが解消されていないこともあり、今後も、区レベルで何らかの第三者機関の設置を求めていきます。

         
■主な新規計画内容(高齢化対応・介護編)
高齢者人材バンクの創設・運営<新規>
 高齢者の持つ経験・知識・技術を人材バンクに登録し、児童館や、地域区民センター等の各種講座などにいかし、高齢者の知識・技術を次の世代に継承する。
 ■平成13年度(2001)創設へ。
高齢者グループリビングの支援<新規>
 高齢者が加齢による身体機能の低下を補うため、少人数のグループで共同生活していく居住形態に対し、支援プログラムの作成やボランティアによる支援体制づくりを進める。
 ■平成15年度(2003)まで2所→平成22年度(2010)までに累計7所に。
痴呆性高齢者グループホームの整備<新規>
 痴呆性高齢者が、少人数のグループで共同生活するためのグループホームを、民間住宅の活用、特別養護老人ホームや公営住宅との併設などにより整備する。
 ■平成12年度(2000)5人→平成15年度(2003)までに累計33人→平成22年度(2010)までに累計98人に。
在宅介護支援センターの整備
 高齢者の在宅介護や介護予防・生活支援に関する総合相談、情報の提供、サービスの調整などの機能を持つ地域型在宅介護支援センター(ケア24)を1地域に3 ヵ所、全体で21 ヵ所整備する
 ■現在7ヶ所。平成15年度(2003)まで毎年3所増=累計16所に→平成17年度(2005)まで累計21所に。

 また、地域型在宅介護支援センターを統括し、その機能を調整する基幹型在宅介護支援センターを区役所と3福祉事務所の計4ヶ所に設置する(平成13年度/2001実施)。  
いきいきデイサービス事業+敬老会館のバリアフリー化
 身体機能が低下し、閉じこもりがちな高齢者に対し、敬老会館において生きがい活動を行い、健康の保持増進を図る。そのために、敬老会館のバリアフリー化を進める 現在7所で実施中。平成15年度(2003)までに累計16所→平成22年度(2010)までに33所に。
高齢者等自立度アップ支援事業
 寝たきり予防を効果的に進めるため、脳卒中、骨折などの患者の退院情報を把握し、早期からのリハビリや保健指導を実施する。また、閉じこもりを防止し、生きがいと社会参加を促進するため、地域で自主的に活動するグループ(地域ささえ愛グループ)を支援する。
 ■現在49の自主グループが存在。平成13年度(2001)新規に10グループを支援→平成22年度(2010)までに累計77グループを支援。
高齢者在宅サービスセンター(ふれあいの家)の整備
 既存施設の活用、提供等により通所介護施設である高齢者在宅サービスセンター(ふれあいの家)を整備する。
 ■平成12年度(2000)現在25所→平成15年度(2003)までに累計28所→平成22年度(2010)までに累計30所に。

※このほか、社会福祉法人等が、区内に特別養護老人ホームやケアハウス、老人保健施設等が建設される場合に助成することが計画されています。


(7) 今後の福祉・保健事業
 
■主な新規計画内容
「健康都市杉並」の推進・基盤整備<新規>
 区民が安心して健やかに暮らせるまち「健康都市」杉並を実現するため、健康都市杉並ファロの開催や健康都市指標の作成・評価等を実施し、推進基盤を整備する(新規事業として、健康都市白書の発行・健康都市推進区民会議の開催・健康学習のガイド作成など実施)。平成13年度/2001〜
区民健康診査(うち成人歯科健康診査=新規)
 成人区民の生活習慣病等の早期発見・治療・指導等を目的として30歳以上の区民を対象に健康診査を実施するほか、新たに成人歯科健康診査(歯周疾患検診)を実施し、区民の健康管理の推進と健康への自覚の高揚を図る。平成13年度/2001〜
歯科保健医療センターの設置・運営<新規>
 障害者歯科診療と家庭訪問歯科診療を統合し、歯科保健医療センターを設置する。同センターでは、障害者・高齢者等の歯科診療のほか、在宅要介護者や障害者等のかかりつけ歯科医の紹介、かかりつけ歯科医のための研修等を行う。平成13年度/2001〜
障害者集会施設の建設<新規>
 障害者の社会参加を促進し、交流や自主的な活動の場を拡大するために障害者集会施設を建設する(〜平成13年度/2001)。
障害者地域自立生活支援センターの整備<新規>
 地域における障害者の自立生活のため、在宅サービスの利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援等を行う障害者地域自立生活支援センターを整備する(平成15年度/2003 開設)。
重度知的障害者生活寮の整備<新規>
知的障害者生活寮・生活ホームの整備
 重度知的障害者が地域の中で援助を受けながら少人数で共同生活する生活寮(入所委託)を整備する(後期計画・平成18〜22年度/2010)。

 授産施設等を利用している知的障害者が、地域社会の中で援助を受けながら少人数で共同生活するための生活寮(入所委託・平成14年度/2002・1所。後期計画でさらに1所)と生活ホーム(運営助成・平成15年度/2003・1所。後期計画でさらに1所)を整備する。
自立宿泊訓練事業への助成<新規>
 重度の身体障害者が、地域の中で安定した生活が送れるよう、宿泊しながら自立生活の体験や訓練を行う事業に対し助成を行う(平成14年度/2002実施)。

※そのほか、小規模授産施設・精神障害者共同作業所・グループホーム・知的障害者生活ホームの助成先の拡大等々が計画されています。


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