杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2002

新たな「ムネオ」を誕生させないために 

〜NPO支援基金〜
補助金(公金)の支給額を決める委員の人事はこれでよいか?

 杉並区は新たにNPO条例をつくり、NPO・ボランティア活動との協働を進めるとともに、活動支援も強化していくことになりました。なかでも、新たに杉並区NPO支援基金を創設したした点が注目を集めているところです。

 国のNPO支援策の不備が指摘される中、自治体による新しい試みとして、大いに評価されるべき条例と思います。悪用されることなく適切な活用を願っています。
 税金が安くなる
 現在NPOへの寄付は、所得控除(減税)が認められないケースが大半。国の認定NPO法人制度の認定要件は厳しく、活用しにくい(寄付しにくい)のです。

 日本でNPOへの寄付が盛んにならないのは、ここに原因がありました。そこで、新条例を制定し、区が独自に基金を設置し、そこに寄付する形をとることで、減税への道を開いたわけです。

 NPO支援基金に対する寄付金は、NPO等活動推進協議会(以下NPO協議会)で審査され、そこで助成先(助成額)が決定されます。区はNPO協議会の決定を受け、基金から個々のNPOに補助金を支給します。

 この基金への寄付は、名目的には「杉並区」への寄付という形になります。その結果、寄付者は、寄附金を課税所得から控除することができるようになり、所得税・住民税を安くすることができるというわけです。

 NPO活動を支援する者に報いる制度であることは間違いありません。


 悪用されないように
 ここで大事なことは、特定の権力者や政治家などの圧力によって、支援するNPOや補助金の額が歪められないようにしなければならない点です。

 これは最近ムネオ議員の活動が話題になりましたので、ご理解いただけるかと思います。

 区のNPO支援条例によると、助成するNPOを決めるのは、区長や議員ではなく学識経験者やNPO活動経験者などで構成するNPO協議会(いちおう第三者)に委ねられることになっています。

 しかし、この協議会の委員は任期制限がゆるく、無制限に再任が可能になっています。これでは年月が経つうちにメンバーが固定化したり、そこに何らかの「利権」が発生する危険性があります。

 実際、「良い制度だと思うが、この制度を使って悪質な税金逃れが発生しないよう透明性を確保しなければならない」といった識者の声も。良い制度だからこそ、悪用されないよう注意を払わなければならないのです。


 第三者チェックなき人事
 区長や区議会議員をはじめ教育委員・選挙管理委員・監査委員などは、数年ごとに選挙などによる改選手続があります。

 また、これらの役職は区民によるリコール制度も法制化されており、定期的に第三者のチェックを受ける機会が確保されています。いずれも、公権力を行使したり、公の意思形成に大きな影響力を与える役職である以上、当然といえば当然です。

 NPO協議会の委員も、同じような立場にある方々といえます。補助金(公金)の支給先や支給額を決定する権限が与えられるのですから、その任務は決して軽いものではありません。

 しかし、区の構想によると、この協議会の委員の指名権・罷免権は区長の専管事項であり、区民や議会の同意・承認手続は、いっさい不要になっています。

 つまり、人事について、第三者チェックが全く働かない制度になっているのです。しかし、選挙やリコール制度がないにもかかわらず、任期制限がゆるく、無制限に再任することができるのは、かなり問題です。


 利権化を防ぐために
 あってはならないことですが、長きにわたって同一の委員を務めることで、何らかの「既得権」や「利権」が発生する可能性は、否定できないところです。

 このため、通常の公職者の場合、選挙や直接請求(リコール制度)のほか区民や議会の関与などによって法的に二重三重のチェックを受け、正当性を確保する機会が設けられています。今回の構想は、この点の配慮が欠けているのです。

 しかし、今回の制度では、選挙などの民主的な手続で選ばれていない方が、公金の支給先を事実上決定する権限を持つようになるわけですから、とりわけ慎重な人事手続を確保すべきなのです。

 国が想定してこなかった形で減税が行われることを考えても、その影響は小さくなく、
  • 1.他の公職者並みに選挙(or議会の同意制)やリコール制度を整備するか、
それが無理なら、
  • 2.委員の任期に一定の限度を設けるべきではないかと考えてきました。


 独自に修正案を提出
 そこで、私は、この制度の透明性を高めるためにも、委員の任期を最大四年までに限定する独自の修正案を議会に提出し、論戦を挑みました。

 もちろん、理想は(1)でしたが、大幅な修正となると、多くの賛同を得ることが難しいため、(2)を選択したものです。

 通常このような提案は、あっけなく否決されるところですが、幸い、今回は党議拘束にこだわらず、信念を貫く議員の方が出現。委員会の段階では与野党・党派の枠を超え、良識ある方々の賛成を得て、修正が認められることとなりました。

 このような「珍事」は、ムラ社会の色が濃い区議会では初の出来事です。


 区にも「ムネオ」が?
  しかし、この修正は、党議拘束の強い本会議では、とくに明確な理由が説明されることもなく、否決されてしまいました。委員会の段階で出た結論が、本会議でひっくり返された前例はなく、なんとも不思議な結末となりました。

 現在の政治情勢を考えれば、この修正は「正論」と確信していますが、どうやら修正されると困る方がいらっしゃったようです。ひょっとして、どこかの誰かが「ムネオ」のように、陰で糸を引いていたのかもしれません。

 ボランティア活動やNPO活動を支援するのは素晴らしいことで、大いに推進すべきことです。

 しかし、その善意が、悪用されたり、あるいは「税金逃れ」の手段として使われたりしないよう、チェックしていくことも必要になってきました。

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