杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2002

赤字区債の発行は、いつまで許されるか?

決算から

 政府においては、平成12年度も国債の乱発をつづけ、故小渕首相は、当該年度の予算原案を踏まえて、ついに自らを「世界一の借金王」と表現。今となっては、かなり古い話のようにも思いますが、この年の決算を考えるとき、忘れてはならない「思い出の発言」と思います。

 実際、当該年度末の政府債務は、645兆円にも達しました。対GDP比は、先進国中最も高い水準となってしまいました。また、ムーディーズもS&Pも、政府発行および政府保証の円建て債務の格付けを、従来よりさらに一段階下げた年でもありました。

 杉並区においても、ご多分に漏れず、赤字区債(減税補てん債)を発行しつづけていますが、同様に非常に危ないものを感じざるをえません。


いつまでも国が面倒をみてくれない現実

 当該年度は、政府が、地方交付税の不足分8兆円を銀行から借り入れるという大失態を起こしました。

 従来、この不足分は、資金運用部が交付税特別会計に短期融資していたものです。しかし、郵貯の集中満期によって資金運用部が逼迫し、新規の貸出が停止されたため、銀行が政府に8兆円を融資したというわけでした。

 これは日本の危機を端的に物語っています。

 政府は、大量の国債を発行しただけでなく、さらに銀行救済のために銀行に投入した公的資金を上回る規模で銀行から借り入れをしたのです。この資金調達がきわめて矛盾に満ちたものであることは、言うまでもないでしょう。

 もはや、財源の裏打ちのない財政出動は、やめなければなりません。区が受けている地方特例交付金も、この交付税特別会計から拠出されているものなのです。

 一寸先は闇ということを考えると、そろそろ国の財政的支援があることを前提とした財政運営は慎むべきであり、どのような名目であれ、赤字債を発行しない財政運営を早期に実現することを目標としなければなりません。

本来、赤字債の発行は、特例ではなかったか

 そもそも「恒久的な減税」に対して、それを補てんする赤字債の発行を延々と続けているのは、異常だと認識しなければなりません。

 「恒久的」というのは、将来にわたって、それが続いていく・・・ということであって、恒久的な減税を理由に赤字債を発行するというのでは、赤字債の発行まで恒久的になってしまいます。

 しかし、建設債は、財政負担の平準化という意味で必要な場合もありますが、赤字債は、現役世代の借金のツケを将来に回すだけのシロモノであり、いつまでも発行し続けてよい性質のものではありません。

 財政の健全化とは、「赤字債に頼らない財政運営ができるか否か」ということだと考えます。本来、起債は、建設事業債(教育債・福祉債等)に限るべきであり、赤字区債(減税補てん債)の発行に頼った財政運営からは早く脱却する必要があります。

 そもそも赤字債の発行は、法律的な位置づけからいっても、特例のはずであり、これほど長期にわたって罪の意識もなく発行し続けるのは、子どもや孫の世代に本当に申し訳ないと思わなければならないはずですが・・・このような意識は、最近では微塵も感じられなくなってしまいました。もう感覚が麻痺しているのかもしれません。


区の財政再建に必要な視点

 当該年度も、区はあてもなく大量の赤字区債を発行し、放漫経営を続けていますが、区長の過去の政治的主張からみれば、このような過大な赤字区債を慢性的に発行しつづけることは、理解しがたいことであって、容認できないものです。

 残念ながら、すでに日本国債の「市場金利」は、円建てのイタリア国債・スペイン国債よりも高くなっています。これは、市場が日本国債をイタリア国債やスペイン国債より下に見ているということです。いつまでも超低金利がつづく保証はどこにもないことを肝に銘じるべきでしょう。

 赤字区債は、後年に確実にツケが残っていく性質のものであり、次世代の自由を奪ってしまうものです。これ以上、若年層や子ども・孫の世代にツケを回すことは、やめるべきであり、真にやむを得ない場合に備え、赤字区債の発行をやめる(少なくとも大幅に控える!)べきです。


 なお、財政再建を重視する観点から、当該年度の決算において、具体的に指摘できる点としては、次のようなものがあります。
  1. 区の入札・契約制度に課題が残っている。談合の存在を彷彿させる状況証拠が放置されているほか、入札方法・契約方法に問題のあるものがまだまだ多い。
  2. 日本興業銀行(みずほ)から購入した4.3.haの用地については、まだまだ減価交渉の余地があった。状況を総合的に判断すると、高値買収と判断せざるを得ない。
  3. 区民の日常生活に何ら関係ない保養所・宿泊施設をいつまでも維持し、この財政難のなか、数億単位の赤字を出してまで経営を続けてきた点。
  4. 医療費支出の合理化・点検作業等への取り組みがじゅうぶんに行われておらず、この点についても、公約である「民間の経営感覚」が発揮されていない点。
  5. 男子職員独身寮の新設や東福祉事務所の移転改築などの不要不急のハコモノ建設。今後の施設整備計画は、建設前に見直す必要はなかったか。 

 なお、いま、医療制度改革が話題になっていますが、杉並区でも、一般会計から支出されている保健・医療関係費は、年々膨大なものになっています。杉並区も、国民健康保険を経営している保険者であり、医療費支出については、他人事ではありません。


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