杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2001

区立の保養所(別荘)は、もう廃止すべきだ!

【特集】 杉並区が抱えるバブルの遺物


    財政難 すでに区内の「出張所」は廃止。              
                ・・・なのに存続し続ける「保養所(別荘)」の謎

 まず、「すぎなみ自然村」をご存じだろうか? 杉並区が約70億円をかけて群馬県吾妻町に建設した区立の宿泊施設(保養所・別荘)8ヶ所のうちのひとつである。

 杉並区の保養所(別荘)は、大赤字!

  「すぎなみ自然村」は、バブル期に計画が持ち上がり、平成6年に開館。しかし、ここは温泉もなければ、スキーもゴルフもできない場所である。この間の赤字額は、毎年約2〜3億円という有様になっている(稼働率51%)。




 こんな大赤字でも、平然と経営をつづけているのは「親方日の丸」だからだ。もちろん、誰が責任を取ったわけでもない。

 民間には数多くのホテル・旅館・民宿があるなか、なぜ「赤字区債」を発行してまで(=子孫にツケを残してまで)、このような施設を維持する必要があるのだろうか?

 もし、このムダを廃し、ニーズの高い保育・介護基盤の整備をするか、減債基金を積み立てること(借金の返済)ができていたら、いったい、どれほど多くの人が救われていただろうか・・・

 ※なお、区は、竹下内閣の「ふるさと創生」資金1億円を活用し、ここで温泉を掘っている(もちろん温泉は出なかった)。


 70億の別荘をもつ余裕はない!
 格安(一泊2食付3,300〜5,600円)で、豪華な食事も出るし、部屋も立派。

 現地に行けば、その優雅さに驚かない人はいない。(※写真→) 

 しかし、この財政難の中で、このような施設を維持する理由が、いったいどこにあるのか。日々の生活に困っている者が、区外の保養所(別荘)に金をかけている場合なのか?廃止(or NPOの参画によって他の施設に転用)するか、さもなくば「独立採算制」を導入(or完全民営化)すべきではないだろうか。


 借金をしてまで維持する必要はどこに?

  私は、予算や決算の度に、そんな主張をしてきたわけだが、ようやくこの夏に、これに対する区の具体的な改善提案が出された。

 提案は、来年から宿泊施設に「民営化方式」を導入したいというものであった。この方法を導入することで、なんとか区の負担を年間総額2億円程度に抑えることができるのではないか・・・との皮算用があるという。

 なるほど、案によると、宿泊料は値上げされる。経営主体も変わる。また、区民以外にも利用が大きく開放されることになる。

 だが、これは完全な民営化(独立採算)ではないのだ。

 施設は業者に無償貸付。今後必要となる大規模修繕費などについても、区が負担する。なかには区が損失補填すると最初からハッキリ明言している施設もあるし、稼働率38%の秋川荘に至っては、今回の改善対象にすらなっていなかった。改革といっても、ポーズだけだったのだ。

 このように、区の提案した「民営化方式」は、独立採算の「完全民営化」とは、大きく異なるものであった。結局のところ、区の資金を使って見通しのないまま、赤字経営を続けるだけであって、とても賛同できるものではなかった。


 苦しい財政難もあって、区はもう何年にも渡って「赤字区債」(ただの借金)を出し続けている。

 (■写真■) 開業以来、一度も火を付けたことがない保養所の囲炉裏


 そのかなりの額は、福祉水準の維持にすら使われておらず、稼働率50%程度の保養所・宿泊施設の維持に消えているのである。(杉並区が保有している宿泊施設が、いかに激しい赤字を出してきたかは、上のグラフの通り)。

 いうまでもなく、この負債は、みなさんのお子さんや、お孫さんが返済していく性質のものである。


 今がよければそれでよいのか?

 私あてには、次のような意見が続々と届いている。「現に保養所を使っている利用者がいることを無視して廃止しろというのは許せない・・・」。かなり激しい調子のものが多い。

 しかし、私とすれば、このような意見こそ、許せない思いを抱くのだ。毎年垂れ流している膨大な赤字は、現役世代の失政のツケなのである。

 それを何の罪もない子どもや孫に押しつけたうえで、「現在の利用者は満足しているのだから、廃止なんてけしからん!」と言うのは、実に無責任な態度だ。

 そもそも保養所の経営は、本来区の仕事といえるのだろうか。また、保養所は、区民の日常生活に密接に関係しているものなのだろうか。

 そうでなくとも、日々の生活に困窮している方は、たくさんいるのだ。保養所の経営より優先すべき課題は他にたくさんあるのだ。

 本来、行政が行うべき仕事は、民間ではできないようなサービスの提供や、教育の機会均等を確保すること等であって、保養所の経営は、そのいずれにも当てはまらないことである。

 むしろ貴重な公的資金をこのような施設に使うことで、他の行政サービスの低下を余儀なくされているのが実態なのだ。それでも保養所を維持することが果たして適切なことなのかどうか、そろそろ真剣に考え直すべきではないだろうか。

 どの世界にも「抵抗勢力」が立ちはだかっているが、この問題でもそれは同様。ただ、使い込んでいる金額が多額に及んでいるだけに、この問題は見過ごすことができない。


 もう区も「構造改革」を先送りすべきでない

 初当選以来、この2年、私は、この不正を厳しく追及してきたが、残念ながら、この間に廃止が決まったのは一ヶ所(菅平)だけ。他の施設は、今後も存続するというのである。

 これでは民間出身の若い区長を選んだ意味がない。さまざまな「しがらみ」で 身動きがとれないのはお察しするが、こんなことでは「構造改革」は頓挫したも同然である。

 そうでなくとも、すでに山田区長は、この3年間で、選挙公約違反の減税補てん債(=赤字区債)を45億円も発行しているのだ。もう先送りは許されない。決断は「待ったなし!」ではないだろうか。

 機会があれば、みなさんも、ぜひ一度、現地をご覧いただきたいと思う。そして、これ以上「赤字区債」を出してまで経営をつづけるべきかどうか、これは、みなさんご自身で判断していただきたいと思う。

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