杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線2000 8月C No.64

あなたの身近な大問題

どうする?! 国勢調査

 
 今年は5年に一度の国勢調査の年。10月1日の国内在住者であれば、天皇ご一家も、外国人の方も、ホームレスの方も、みな調査票を提出することになります。10月1日を中心に(9月下旬〜10月上旬)、調査員が各ご家庭を訪問し、調査票を記入するようお願いされるはずです。

 いろいろ批判が多い調査であることも事実ですが・・・かといって、調査に協力しなければ、勝手に「聞き込み調査」をされたり、早朝や深夜に何度も訪問されてしまうことになります。総務庁のマニュアルをみても、調査票を回収することができないときには、調査員が「聞き取り調査」を行うよう指示されているのです。

 このため、全国の過去の例をみても、近隣のお宅や、建物を管理している不動産会社に状況を聴き、調査票を埋めていったという例が報告されています。また、法律上も、調査に協力しなかったり、ウソの申告をした場合は、罰則(最大6ヶ月の懲役 or 10万円の罰金)規定があります。


 プライバシーは守られるか?


 調査票には、「住所」「氏名」「年齢」「職業」だけでなく、「年収」「勤務先」「学歴」「配偶者の有無」「国籍」「居住室数」といったことまで記入を求められます。そのため、昔から問題になっているように、国勢調査によって、プライバシーが漏れるのではないか?・・・という疑問は拭えないようです。

 調査活動を委託される調査員の方は、ほとんどがご近所の方。「近所の人に年収を知られてしまうのではないか」「リストラにあって無職だが、恥ずかしいので書きたくない」「調査後に芸能人の居住地が漏れて人だかりができた」といったような話を耳にします。ご近所の人が調査にあたるからこそ、困るというわけです。

 その一方で、担当する調査員の中にも「調査を担当する人がおらず、半ば強制的にやらされているような状態なのに、毎回嫌な思いをする」「留守のお宅も多く、深夜労働になってキツイ」「誰が出てくるかわからないマンションなどでは、ときに身の危険を感じることもある」といったように、調査員にとっても酷な制度になってしまっています。その意味では、調査員の方も、被害にあっているわけです。

 そこで、今回の国勢調査から、全世帯へ封入用のシールが配布されることになりました。また、杉並では独自に提出用の封筒が配布されますので、それにシールをしたり密封して提出すれば、プライバシーは守られるといわけです。もちろん、根本的な解決にはなっていないのですが、一歩前進したとはいえるかもしれません。


 調査は何のために?

 しかし、調査員に直接調査票を提出することが原則になっているため、それでも不安を感じる意見は後を絶ちません(封入して提出されていない調査票に記入漏れがないか検査するのは調査員の仕事です)。このため、ひと昔前に比べれば配慮が進むようになったとはいえ、それでも不安が拭えず、ハナから調査を拒否すると決めてしまっている人もいるようです。

 ただ、調査票は、さまざまな政策立案の基礎統計となるものです。調査の方法に問題が多いのは事実ですが、調査によって得られたデータは、学術研究のうえでも、重要なデータとなっています。

 たとえば、昼夜人口が著しく異なる東京では、災害が昼と夜のどちらに発生しても、十分に対応できるよう、それぞれ異なった防災計画を立てる必要がありますが、国勢調査で得られた通勤・通学に伴う人口の流れや流動量に関するデータが、それに一役買っています。とくに東京では、単身赴任や学生などで住民登録をしていない居住者も少なくありませんから、住民票データだけでは不十分という理屈も、わからない話ではありません。

 このほか、政治的には、向こう5年間の小選挙区の区割りや議員定数の決定資料になったり、地方交付税交付金の算定基準となったりしています。国勢調査で人口が減ってしまえば、地域によってはマイナスの影響が出ることもあるのです。


 役所に直接持参 or 郵送での提出が禁止されているわけではない


  私は、現在のような調査方法を続けることは、あまり賛成できないのですが、とはいっても、国勢調査が政治的にも学術的にも重要な意味を持つ調査であることを考えれば、調査そのものは必要だと考えています。

 プライバシーに配慮しつつ、なんとか多くの人が協力できるような方法はないものか・・・そこで、私は、「調査票は郵送提出でも処理できるようにし、原則に拘泥せず、郵送提出という方法も周知してほしい」と議会の場で意見要望をしたことがあるのですが、イレギュラーな提出方法という扱いで、周知には至っていません。

 ただ、実際に、調査協力者が減ってしまうのは、役所にとってもあまりメリットがありません。総務庁も、区役所に直接持参したり、郵送で提出しても、拒否せず処理することを明確にしています。どうしても不安な方は、せめて直接持参するか、郵送で提出することをオススメします。

 こうして、調査する人も、調査される人も、不安でいっぱいになるのが国勢調査。今回も、調査を巡っては、水面下で、さまざまなトラブルが発生する可能性が予想されています。国勢調査に関する素朴な疑問や、みなさんの貴重なご体験など、お寄せいただければ幸いです。


  (参考) 調査員とは?

 最近は、調査員のなり手が減る傾向にあるといいます(区の広報でも頻繁に調査員を公募しています)。実際には、半ば一方的に協力要請して人集めしているとも耳にしています(なお、このほかに、指導員という方もいます。これはほとんどが自治体の職員が担当します)。
 
 今回の国勢調査では、全国で約100万人が、「調査員」として国勢調査に関わります。調査員になる条件とは何のでしょうか? 総務庁の「平成12年国勢調査市町村事務要領」には、次のような調査員の選考基準として、次のようなものを挙げていますので、参考までに抜粋しておきます。

●調査員は、担当調査区の各世帯を訪問して世帯の人と面接し、当該世帯及び世帯員の諸属性を調査する事務を行うこととなるので、この点を考慮の上、原則として民間人の中から、次の要件を考慮して適切な者を選考する。

1.責任をもって調査事務を遂行できる者であって、原則として20歳以上の者であること
 調査員は、調査の趣旨・方法等を十分理解した上で、所定の期間内に調査書類を携行して担当調査区内の各世帯を訪問する実査活動が必要であるので、調査期間中、責任をもって実査活動を行い得る者でなければならない。
 また、実査活動後は、OCR形式の調査票(以下「OCR調査票」という。)の検査及びコード記入等の事務を行うこととなるので、こうした調査員としての事務を十分に行い得る者でなければならない。
2.秘密の保護に関し信頼のおける者であること
 調査員は、秘密の保護等について信頼のおける者でなければならない。
3.税務・警察に直接関係のない者であること
 国勢調査の調査票が徴税や犯罪捜査の資料として利用されるのではないかという誤解が生じないようにするため、税の賦課徴収の事務に直接関係する者や警察関係者などは避ける。
4.選挙に直接関係のない者であること
 国勢調査の調査活動が選挙運動と誤解されないようにするため、被選挙者、選挙事務所の職員などは避ける。特に、調査期間前後に選挙が予定される場合は、立候補予定者、選挙運動員その他特定の候補者の応援活動を行う者などが選考されることのないようにする。



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