杉並区議会議員(無所属)堀部やすし最前線2004



<今月の視点>
『施設白書』で公共施設のコストを考える

 杉並公会堂の改築問題が審議されていた頃、よく私は学校施設(改修・改築の今後の見通し)と公会堂改築の進め方とのバランスの悪さを話題にしていました。(たとえば、こちらへ)


 杉並区内には、区立小学校が44校、区立中学校が23校、合計67校あります。

 延べ床面積では、区立施設の約半分が学校施設ということになるわけです(39.7万u)。毎日使う義務教育の施設ということもあって、杉並区の中でも、とりわけ重要な施設ということができます。

 問題は、その大半が昭和40年代〜50年代に集中して建設されている点です。なかには昭和30年代の建物も残っています。財政見通しが悪い中ということもあり、大切に使い、できるだけ延命化をはかることが必要です。

 しかし、そうは言っても、なにしろ老朽化の進む建物が増えているのです。どんなに延命化を図って頑張ってみても、本格的な改修や建て替えを求める声が、次々と寄せられることは間違いありません。

 最近でも、たとえば、今年度の予算審議で、「昭和20年代に造られたプールはいい加減に何とかすべきだ」という痛切な声をあげる議員の方がいました。

 ご主張は、まったくそのとおりだと思います。各施設においては、改修や耐震補強が行われていますが、それでも基本的な耐用年数そのものが延びているというわけではないからです。

 子どもが毎日使う場所であることを考えると、老朽化を放置しておく訳にもいかないでしょう。そもそも学校は震災救援所であり、災害時における重要な避難拠点です。以前から言っているように、「震災時に学校に逃げてみたら、学校が倒壊していた!」というのでは話にならないはずなのです。


 だからこそ、私は「大規模事業である杉並公会堂の改築を進める前に今後の学校施設の改築についてどうするのか、しっかりした見通しを立てておくべきではないのか」
「そんな安易に33年間もの一括契約(杉並公会堂改築等PFI事業)を決めていいのか?」

 そんな問題提起を繰り返していたのです。


 残念ながら、実際には、公会堂改築が優先されてしまいましたが・・・

 施設の使用頻度や区に課せられた整備義務の度合いからいえば、私は公会堂より、学校施設の今後を優先して考えざるを得ないと考えていました。

 高齢化も進んでいます。そのための施設を求める声も強いものがありましたが、そんなあれもこれも整備できる体力はありません(このため、私は入札の過程もさることながら、先の公会堂改築案には賛成できませんでした)。

 しかし、財政状況や区立施設全体の状況(施設の現状や維持コスト)が、全体的・総合的に把握できないと、こうした考え方は、なかなか理解してもらえないものなのかもしれません。


 このたび、杉並区で『施設白書』が完成し、発表されました。

 『施設白書』は、区立施設の現状をまとめたもの。これを機会として、各界各層の方々に区立施設の今後のあり方を考えるきっかけができればと願っています。

 このような白書は、3〜4年前より、都内の自治体の中で発行されるケースが増えてきていました。先行自治体では、白書の発行を契機に、公共施設や地域・自治体のあり方について考える端緒ができたといいます。杉並区でもそうなってほしいと思います。

 白書に掲載されている数値や図には若干の疑問点も拭えませんが(このあたりは来年度の課題ですね)、大まかなコストや延べ床面積・築年数などの確認には役立つと思います。

 この『施設白書』は、5月より杉並区の公式ホームページの中にも掲載されはじめました。「広報すぎなみ」にも概要が掲載されると思います。興味のある方は、ぜひご確認ください。




 さて、学校の改築需要が急増していく問題については、現在、都区協議会において議論(というより正確には、東京都に対し財源配分してくれという話し合い)が始まっています。

 しかし、児童生徒数は、昭和50年代の半数にまで落ち込んでいる(逆に要介護高齢者は増加している)のが現状です。財政面からみても、公会堂PFIのように、後年度負担の重い事業もスタートしてしまいましたので、これ以上の無理は厳しいと言わざるを得ません。

 このような事実を冷静に考えると、施設の再編成や統廃合を全くしないというわけにはいかないでしょう。杉並区では、まだ経験のない学校統廃合ですが、もはや他人事の話ではありません。感情的にならず、冷静に議論したいものです。


<堀部やすし最前線2004更新情報>
 忘れられた年金問題の核心
政治家の未納問題だけで話題を終わりにしないために
 ゴールデンウィーク中のニュースは、年金問題ばかりです。有力政治家の未納が明らかになっただけに仕方ないと思いますが、年金改革の報道がそんな話題だけに終わってしまうのは困ったものだと思います(なお、私に国民年金の未納はありません。念のため)。


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