杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.51


(こんな保養所いらない・その1)

これが「すぎなみ自然村」の実態だ!


 杉並区の今年度予算をみると、また新規に15億円もの赤字区債を発行するなど、相変わらず借金体質は改善されていない状況にあります。このような借金を続けた結果、国+地方の債務残高は645兆円にもなっています。聖域を設けずに行政の歳出を削減していかなければ、とくに若年層の老後はお先真っ暗です。

 さて、行政のムダ遣いシリーズとして、今回は、行政の経営する宿泊施設の実態をお伝えしましょう。杉並区も、ご多分に漏れず、毎年大赤字を出しながら、豪華な保養所・宿泊施設を経営しつづけています。今回と次回の2回に分けて、その実態をお届けします。

 まず、今回は、ここ数年、毎年の赤字額が2億円にものぼっている 保養所 「すぎなみ自然村」(群馬県吾妻町)の状況を紹介します。


 税金投入で格安にしているにもかかわらず、稼働率50%台の「すぎなみ自然村」

 昨年、私は一種の新人議員の研修の一環で、各宿泊施設を視察する機会がありました。私が実際に宿泊した施設は、築30年ほど経過していたので、豪華さは全く堪能できませんでしたが(笑)、見学して回った他の施設のなかには、「これが本当に役所が保有している建物なのか!」と、驚いてしまうような立派な施設も、存在していました。

 とくに群馬県吾妻町にある「すぎなみ自然村」は、バブル花盛りのころに計画が立てられたこともあり、とにかくハチャメチャな保養所となっていました。

 行ってみたら、そこは、へき地そのもの。利用者はさぞ少ないだろうな、と思っていたら、その通りで年間の平均稼働率は50%台税金を投入して格安になっている施設なのに、この数字です。いちおう土日祝日は満員御礼だそうですが、閑散期の平日など、ほとんど誰も利用していない施設となっています。もちろん、経営感覚皆無の杉並区では平日も休前日も料金を同じにしています。これでは大赤字を出すのも、もっともなこと。民間業者からは、民業の圧迫だとの批判も出ています。


 閑古鳥が鳴くには訳がある「すぎなみ自然村」

 延々と山道を上った先に「すぎなみ自然村」はありました(いやー 遠い〜)。そういえば、途中、一行を乗せた大型バスが通れないような小さな小さな橋に遭遇してしまったのですが、あれには参りました。本当に転落するのではないかと思ったものです。

 窓から下を見ると、そこには転落寸前の光景が!(本当なんですよ) バスごと転落してしまうのではないかとヒヤヒヤしたものです。当時はまだ当選して3ヶ月未満。もし、当選者が亡くなってしまえば、次点の方から順次繰り上がり当選になるような時期です。このバスには16人の新人議員が乗っていましたから、次点以下16人が繰り上げ当選となると・・・落選者のほとんどが繰り上げ当選になってしまうところでした(笑)。

 ちなみに、この小さな橋を通過するのに15分近くかかったでしょうか? 大きなバスを借りて出かけるのはやめた方が良さそう・・・とまぁ、そんな山奥にあるわけです。聴けば、食料調達の関係もあって、飛び入りの客は受けつけられない時もあるとか? ちょっと納得してしまいました(笑)。安くなければ誰も行かないことでしょう。

 現地を杉並区が購入したのは、かれこれ10年以上も前のこと。当時はこんなへき地でも、購入競争が激しく、それはそれは苦労したそうです。なんでも、新宿区と争った末に、やっと手に入れた土地だとか。今となっては、もう後の祭りなのですが、
この土地を新宿区に譲っていれば、こんな赤字で悩むこともなかったのに、本当に愚かなことをしたものです。

 温泉もなければ、スキーもゴルフもできない自然村

 たしかに空気はおいしいところです。アスレチック・コースもあるし、キャンプもできる。テニスなどスポーツも堪能できる。赤字の話さえ忘れれば、申し分ないところでしょう。しかし・・・キャンプやテニス程度なら、東京23区内でもできることなのです。せっかく遠路はるばるやって来たのだから、ここでしかできないことをやりたい・・・そう誰もが思うはずです。

 しかし、行ってみればわかりますが、ここには特に語ることのできるものは何もありません。温泉もなければ、スキーもゴルフもできない。まして、この山奥。観光地であるはずがありません。草津が近いと聴きましたが、それでも移動には1時間以上かかるとのこと。もちろん、直通バスがあるわけでもない・・・ホントにドえらいところなのです。

 ちなみに、杉並区も、さすがにこの立地で焦ったのか、それとも一攫千金を狙ったのか、かつて温泉を掘っていたこともあるそうです(使ったおカネは1億円くらいとか?)。もちろん、温泉は出ませんでした。温泉が出ていれば、もっと利用者はいたでしょうから・・・ちなみに、1億円といっても、それも税金から出ていることをお忘れなく。


 豪華ホテル並の客室
 しかし、いちばん、驚いたのは、一流ホテルに負けないくらいの豪華な客室でした。民間なら、どう考えても、一泊1〜2万円はかかる立派な部屋(黒字ベースにもっていくとしたら、3万円以上払ってもらわないと合わないか?)。

 もちろん、食事も豪華。昼食時に当日の夕食メニューを試食してきたのですが、あまりの豪華さに、これまたタマげてしまいました。写真でお伝えできないのが残念ですが、しめて一泊二日2食付きが、たったの5,600円とは驚いてしまいます。いくら何でも安すぎです。いったい、どういう経営感覚をしているのでしょう? この施設だけで、毎年2億円という大赤字を出しているのに。ちなみに、山田区長になってから、単なる借金である赤字区債をもう30億円以上も発行しているのですが・・・(建設区債を除く)

 いうまでもなく、破格で豪華食事+豪華客室に宿泊できるにもかかわらず、利用者が少ないというのは、へき地にあるせいでしょう。とにかく何もないところなのですから、利用者が少ないのは当たり前で、改善の余地など、全くないところです。まともな思考能力をもっていれば、ズブの素人でも、こんなところに保養所をつくろうとはしないと思うのですが、やっぱり「バブル」がなせた技なのでしょうか? 「過ちを改むるに憚ることなかれ」といいますが、こんなものをいつまでも経営し続けるのは、「親方日の丸」だからでしょう。民間なら、とっくに倒産しているはずです。
 エアコン・カラオケ完備の「自然」村

それにしても、みればみるほど、コンセプト(理念)のない村です。

「自然」村なのに、超豪華ホテルのような人工的な客室だが、
 減価償却を考えると、1泊3〜4万円は払ってもらわないと採算がとれそうもない
抜群の音響設備つきの体育館だが、
 ちなみにコンサートは過去に2〜3回しか開催していないそうな
標高も高く涼しい地域だというのにエアコンが完備している豪華なログハウス
 個別風呂も電子レンジも完備。なんて素晴らしい自然体験?!
和やかに会話ができそうな暖炉なのに、
 危ないので、火を入れたことは一度もないそうな
自然体験を売りにした「自然村」だというのに
 なのに、しっかりカラオケ完備で、夜は飲めや歌えや・・・

 よくもまぁ、こんなバカな「自然」村を作ったものだと思います(なお、カラオケだけは採算がとれているとのお話でした)。わざわざ大赤字を出してまで、こんな妙な施設を提供してくれと、いったい誰が頼んだのでしょうか?


 集客努力をしているとはいうが・・・

 さっそく視察後の区議会の審議で、区に利用率が低いことについて問い質してみると・・・区も、レンタアップル事業(年に数回現地に赴き、年間通じて実際にリンゴ作りを体験をする)や、創作館でのイベント(竹細工や陶芸など、現地の方の指導のもとで体験する)を通じて集客努力をしている・・・という答えが返ってきました。

 ところが、よくよく聞いてみれば、「レンタアップル事業」は、申し込みこそ70〜80件あるものの、現地の農家との関係から実際にリンゴづくりを体験できているのは、年間たった20組です。また、「創作館でのイベント」も、平日週二回それぞれ10人限定で実施しているだけに過ぎないものです。とてもではないが、「集客の核」になっているようなイベントではないのです。

 それにしても、なんという「努力」なんでしょう。10人とか20組とか、その程度の集客量しかないイベントを実施して努力していると思っているあたりが、非常識だというのです。こんなものが努力とは聴いて呆れるばかりです。介護地獄や育児ノイローゼで苦しんでいる人が、この話を聴いたら、キレてしまうのではないでしょうか・・・

 
その2につづく)

 
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