杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 2001年12月〜
検証!「レジ袋税」条例(4)
4.ポイントシール制度(エコシール)の是非
  5年間で総額約9億円?の区補助金を新設
  先行例をみても、ポイント還元制度は、あまり効果をあげていないが・・・
※全6回シリーズの第4回。審議を受けて随時内容を更新します。
なお、総目次は、こちら

選挙対策で、商連への「アメ玉」作戦を思いついた?

 レジ袋税は、商店などから強い反発が出ています。「お客さんに5円くれとはいえない」「客が区外へ逃げる」といった反論です。

 議会でも、少なくとも商店会連合会(以下、商連)が反対しているうちは、区議会最大会派の自民党が賛成しない・・・というムードが伝わっていたこともあり、区は、とりわけ商店街対策に取り組む必要に迫られました。

 商連のパワーが、地域で少なからぬ影響力を持っている以上、商連を構成する商店街のトップを抱き込まなければ、最大会派は賛成しそうもなく、レジ袋税は、とても導入できない・・・山田区長は、そのメンツをかけて、商連を説得する必要に迫られました。

 なお、商連や自民党は、前回の区長選で山田区長ではなく、対立候補を応援していました。

 このため、山田区長は、元国会議員(新進党)・元都議会議員(自民党)を経験していながら、苦しい選挙となり、僅差での当選を余儀なくされました。

 次回の選挙も、自民党や商連などが対立候補を擁立すれば、同じく苦戦を余儀なくされることでしょう。

 直接的な応援は要らないにせよ、前回のつらい経験をふまえ、せめて対立候補を立てられないようにしておきたい・・・と山田区長が考えるのは、ごく自然なことでした。


ポイントシール制度(エコシール制度)の登場


 このため、夏ごろより区は新たな商店街対策として、
  1. レジ袋ポイントシール制度(エコシール)
  2. 新たな空き店舗対策、
  3. ICカード事業の導入、
  4. そのほか「千客万来アクティブ商店街事業」などを9月の補正予算に組み入れた点等

 ・・・などを本格的・具体的に提案するようになりました。もちろん、今年(2001年度)は、そのほかにもマイバックの作成という名目で商連に補助金を追加したりと、とりわけ商連への配慮が目立っていました。

 とくにポイントシール制度については、区独自にケタ違いの補助金を投入する計画を発表。商業者の反発に対し、商店街への補助金を大幅に増やす方針(商連へのアメ玉作戦)を打ち出したのです。

 要するに、それとのバーター取引で、レジ袋税の導入に賛成してもらう・・・という作戦でした。

※「ポイントシール制度」(その後、通称をエコシール制度と改称)

 買物袋を持参した消費者にポイントシールを配る制度。25枚集めると100円券と交換するもので、すでに一部のスーパーが行っています。

 これを全区的に広めるため、区は事務経費の全額ほか、金券代の約半額を負担すると発表しました。今後、この補助金は、年々増額していくことになっているのですが、財源の見通しはなく、またも赤字区債を発行するしかない状況です。


区長は、レジ袋税の実施を延期すると発表
ポイントシール制度だけを先行実施へ


 この作戦は見事に成功。区は商連の抱き込みに成功しました。

 ただ、その際、商連の総会では、「区が補助金を投入してポイントシール制度を導入する代わりに、レジ袋税を導入することに賛成する。ただし、少なくとも2003年春ごろまで税のスタートは延期すること」という要望が出され、区長もこれを受け入れて、かりに条例ができても、実施は延期することが確実になりました。

 表向きは、ポイントシール制度(エコシール)の実施によって、区内のレジ袋の使用が1年後に20%削減できていたら、税のスタート時期を先送りしてもよい・・・と、美しい話になっているのですが、実際には、かなり深刻な問題が潜んでいます。

 以下、それを4点に分けて、説明したいと思います。


問題1  商連が指摘した「2003年春」には、区長選がある(4月)

 このため、商連を敵に回したくない区長は落選を恐れるあまり、税をスタートさせることができなくなってしまう可能性が高い。

 2003年春ごろまで税のスタートは延期するとはいいますが、その時には、ちょうど選挙が重なっています。

 選挙前に税を実施することができるのなら、私も心配しないのです。しかし、選挙の時期に税をスタートさせた例は、これまで一度もありません。

 そうでなくとも、新税の実施は、トップの政治生命を奪うことが多いものです(中曽根・竹下・サッチャー・・・etc)。

 この点については、区も巧みな言い訳を用意しており、「ポイントシール制度を導入した初年度にレジ袋の使用が20%減れば、レジ袋税の導入は延期する」と言っています(どのように計測するかは、現在のところ不明)。

 次年度は30%、さらに次には40%、50%・・・とハードルを高くしますが、5年で60%のレジ袋の使用が減れば、最終的にレジ袋税は導入しないという説明を内々にしています(対商連・対議会対応)。山田区長も、選挙が恐かったのでしょう。

 いまのまま、もし、実施時期を定めなかったとしたら、おそらく「景気が悪い」というような理由をつけて、レジ袋税の実施はズルズルと延期になってしまうことでしょう。

 ポイントシール制度のための区の支出は、5年間で通算9億円近くに達します(区の公式説明から試算)。区長がレジ袋税をすぐに実施する気がないのなら、その9億円を直接、プラスチック容器の減量・リサイクル対策や、屋上緑化に使った方が、「費用対効果」は高いのではないでしょうか。

 私は、レジ袋税と同時にスタートしないポイントシール制度には意味がないと考えています(以下、その理由を詳述していきます)。


問題2
 区は、レジ袋税のスタート時期を未定にしたまま、ポイントシール制度だけをスタートさせることを決定。

 ただ、ポイントシール制度は、見方を変えると、税金を使って金券を配るもの。
減収がつづいている中、いったい、どこから財源をもってくるつもりなのか?
(→また赤字区債か・・・)


 ポイントシール(エコシール)制度は、当初、レジ袋の使用抑制のため、レジ袋税導入とセットで行われるものと説明されていました。

 ところが、区長は商連と勝手な約束をしてしまい、レジ袋税の施行時期も明らかにしないまま、ポイントシール制度だけを先行実施させるという話にスリ替えてしまったのです。

 なお、区が支出する補助金は、初年度8,400万円(見込)。5年後に6割のレジ袋が削減されたとすると、総額で9億円近くの補助金が必要になる計算です。私が知る限り、ここ数年、こんな多額の補助金が新設された例はありません。予算カットが続く中、きわめて異例のことです。

 しかも、この財政難の中、この補助金はいったいどこから財源をつくり出すというのか、区は具体的に説明できないままです。

 それもそのはず。区は、ここ数年、赤字区債を大量に発行してやり繰りしているのですから・・・
 また赤字区債を発行して賄うつもりなのでしょう。これでは「構造改革」に逆行するだけでなく、環境対策でスタートしたものが、いつのまにか商店対策にスリ替わってしまうのであり、相当問題です。


問題3
 先行例をみるかぎり、ポイントシール制度は、ゴミ削減にはあまりあまり効果をあげていない

 このようなものにだけ多くの補助金(税金)を投入するのは、「費用対効果」が合わないのではないか?他に優先すべきことがあるのではないか?

 →結局、環境対策でスタートしたものが、いつのまにか商店対策にスリ替わっている!?


 生協さんの調査によると、通常のレジ袋の使用枚数は、来店客10人につき12.8枚とのこと。もし、ポイントシール制度を導入すると、それが12.2枚になり、レジ袋を有料にすると2.9枚になるとのことです(→出典は、こちら)。

 また、愛知県豊田市では、すでに1年半も前(平成12年6月)から、このポイントシール制度を導入しています(正式名称は、買物袋持参共通シール制度=運営資金は市が全額負担。金券部分については、商店と行政が折半)。

 先日、区議会(委員会)は、この豊田市に日帰りで視察調査に出ました。

 行政が直接「金券」「ポイント」に補助金を支出する例は珍しく、杉並のポイントシール制度の行く末を占う意味でも、興味深い実地調査となりました。

 現地では、市をあげて、非常に熱心に取り組みを進めていることがわかりましたが・・・しかし、失礼ながら、効果をあげているとは言い難い状況でした。

 実際、豊田市は、この制度を導入して1年半が経過していますが、レジ袋は、あまり削減されておらず、マイバックの持参率は、15%程度にとどまっています(豊田市が実施した出口調査の結果)。よく税金のむだ遣いだと批判されないものだと思います。

 それでも、豊田市の場合は、杉並の計画とは異なり、この制度に大手スーパーやトヨタ生協(会員23万人!)が参加していますし、そのご努力には頭の下がる思いでした。

 しかし、現実には全市をあげた大キャンペーンを行ったにもかかわらず、この程度の実績をあげるのがやっとだったのです(ちなみに、各スーパーが示すデータによれば、杉並区内のマイバック持参率は、現在10%弱といったところです)。

 ポイント制は効果がないとまでは言いません。しかし、行政が関与してポイント制を実施することは、その「費用対効果」からみて、税金の無駄遣いとなる可能性が強く、補助金(金券)のバラマキに終わってしまう感を強くしたところです。

 なお、杉並区の計画では、スーパーは制度の対象外になっています(商店対策・景気対策のため。しかし、それではポイントが貯めにくくなり、制度が機能しない可能性もある)。

 しかも、杉並は人口流動の激しい典型的な都市部。町会自治会組織の足腰の弱さも考えれば、豊田市以上に厳しい結果になることは、容易に想像できます。

 このように、ポイントシール制度だけを導入しても、レジ袋の使用はあまり減らないことは、すでに実証されています。レジ袋を削減したかったら、レジ袋を有料にしないとダメなのです。

 ましてや、有料化(or課税)を伴わないで、ただポイントシール制度を導入するなど、税金の無駄遣い以外の何物でもなく、「費用対効果」の合わないものです。


問題4
(1) 商店は、シールを2円で買って、4円で換金できてしまう→一種の「益税」「利権の温床」になる可能性も(なお、スーパーは、補助金の支給対象外)

(2) 実際、ここ最近、これほど多額の補助金が新規誕生したケースはない。(なお、支出予定額は、区の外郭団体への補助金並み!ケタ違い!)

(3) そこまでしても、効果を上げられないのは、もはや明白(→問題3へ)

【結論】
 やはり、ポイントシール(エコシール)は、補助金(金券)のバラマキだけに終わるのではないか・・・




 ポイントシール制度は、新たな「利権の温床」となる危険性があります。商店にとって、事務負担は増える面倒なものであるとはいえ、一方でとてもオイシイ話でもあるのです。

 なにしろ、各商店は、シールを2円で買うことができます。これを25枚貼れば、100円と交換してくれます。50円の負担で、100円の収入を生み出すことができるのです。

 自分で貼るもよし、なじみの客におまけでシールを発行するもよし、今のままでは本当に「抜け穴」だらけです。

 区は、これをきちんと管理できるものなのでしょうか。こんないい加減な制度に貴重な税金を投入してもよいものなのでしょうか?(このほか消費税と同様「益税」を不安視する声も出ています)

 この制度については、議会でさまざま問題点をただしても、区は「長引く景気低迷の中で経営が悪化している区内商業の活性化という狙いも併せ持っているのでご理解賜りたい」と答えるばかりです。

 予算書をみても、支出項目は「商工振興費」。やはり環境対策ではなく、商店対策の補助金なのです。そうでなければ、商連が簡単に賛成するはずがありません。

 それにしても、さまざまな補助金がカットされている昨今、商店対策だけを例外としてケタ違いの補助金を創設する・・・と聞いたら、おそらく介護や教育現場の方が激怒されてしまうのではないでしょうか。

 しかも、初年度8,400万円規模の補助金というのは、区の外郭団体並みに優遇されたケタ違いの額。そこまでしても、「費用対効果」が低いことは、すでに指摘したとおりです。

 このようなことは、「構造改革」に反することです。

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