杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.57



ハコモノ移転+改築工事の是非を問う。
福祉事務所も、他の施設と統合すべきだ


 今期の定例会が終わりました。今回は、可決された議案のうち、とくに特筆すべきものを取り上げましょう。

●「乳幼児・医療費助成」について、新たに6歳児まで所得制限が撤廃される方針が決まりました(従来、3歳以降6歳児までは、所得制限によって助成対象外にされる場合が多かった)。

今年10月〜  5歳まで完全助成(所得制限の撤廃)
2001年10月〜 6歳まで完全助成(   〃   )
2002年10月〜 就学前まで完全助成(   〃   )

●また、良好な住環境を維持するための新条例が制定され、店舗面積300uを超える深夜営業店の出店などに対して、区長や近隣住民は、堂々と住民説明会や「生活環境を保全するための協定」等を求めることができるようになりました。
 正式名称は、「特定商業施設の出店及び営業に伴う住宅地に係る環境の調整に関する条例」。制定にあたっては、通産省と東京都から、経済活動の自由や大店立地法を犯さないよう要請される一幕も。また、可決後も、同様の理由で問題視されているのも確かであり、運用にあたっては、営業妨害と批判されないよう、じゅうぶん注意することが必要になります。

 ●東福祉事務所の移転・改築

 今回、私が賛成できなかった点は、杉並区東福祉事務所の移転と改築に関する件です。

 老朽化した東福祉事務所(現在地は、杉並区和田。地下鉄丸の内線方南町駅徒歩5分)は、平成5年の長期計画で改築方針が打ち出され、新たに高円寺南(JR高円寺駅・丸の内線新高円寺駅 それぞれ徒歩5〜6分程度)の地に移転し、改築されることになりました。

 今回の計画は、すでに平成5年の長期計画のときに決まっていたことですが、いうまでもなく、時代の変化にあわせた見直しが必要なはずです。以下、その概要です。なお、総工費は約7億円

・工事件名  杉並区東福祉事務所外一施設改築工事
・工事場所  杉並区高円寺南二丁目24番
・構造      鉄骨造 地下コンクリート造 地上4階・地下1階建
・延床面積   1,664.19u
・その他工事 外構工事
・別途工事   電気設備工事/ 給排水衛生設備工事/空気調和設備工事/昇降機設備工事
 問題点

 今回の定例会では、この移転・改築工事(請負契約の締結)について、議案が上程されていましたが、下に挙げる3つの疑問から、賛成することができませんでした。

@移転そのものに説得力がない。
 
どうしても移転するならせめて現在地周辺にすべきではないかと考えます

 統廃合を行わず、今後も「区内3カ所に福祉事務所を設置する」という方針を維持するのなら、交通不便地域に配慮した設置をすべきと考えます。今回の移転は、わざわざ中心部に移転するもので、このような大幅な移転をする理由が理解できないでいます。現在の3カ所体制を当面維持するつもりなら、現在地周辺に設置するべきであると考えます。

 なお、余談ですが、土地については、宗教法人・立正佼成会と複雑な等価交換をし、取得する予定となっています。


A時代の流れに適合しない改築工事である。

 今後、福祉事務所は単独設置せず、保健センターなどと統合していくべきであると考えています。

 たとえば、デンマークには各地区に「ローカルセンター」「エルダーセンター」といったものが設置されています。これは福祉事務所でもあり、デイケアの拠点でもあり、保健所でもあり、身近な相談窓口でもあるのですが、これが出先機関の本来の姿ではないかと思っています。これからは行政の縦割りや細分化を出先機関にまで持ち込むことなく、保健・医療・福祉の統合を進めていくべきと考えています。現在の形態のまま単なる事務所を新設(移転改築)することは、その文脈からも、IT革命が進行している現在の時代背景からも、大いに疑問が残るものです。

 IT革命といえば、2003年には電子政府が実現される運びです(政府・与党公約)。そうであればなお、電子政府時代の事務のあり方・公的施設の設置のあり方を再検討した上で、工事に入っていただきたかった(他のハコモノ建設と同様に、この事務所についても、先送りすべきだった)と思っています。また、障害者集会施設(新たに設置・併設する予定となっている)についても、同様に学校など既存施設を有効活用して設置するべきであると考えています。


B区長の公約した行革方針と逆行している。
 
この移転改築は、旧法時代に作られた過去の長期計画をそのまま進めたもの。これは、現在、区長が進めている行政改革とは整合がとれないものであり、区長が選挙前に約していた「小さな行政・大きなサービス」に逆行するものです。

 法改正で福祉事務所の設置数や設置基準に関する規制が緩和されています。

 杉並区では出張所を統合する反面でサービスの向上を図るといった予定もあるのに(土日夜間にも自動交付機で証明書を発行する等)、なぜ福祉事務所のあり方について、同じような措置をとることができないのか、疑問に思っています。

 先のデンマークの例ではありませんが、むしろ、他の施設との統合化・複合施設化を図ることによって、出先機関をミニ福祉事務所化するというあり方を模索することも、不可能ではないはずです(合理化しながらも、実質的に拠点は増加させることもできるのではないかという考え方です。実際に来年行われる区の出張所の統廃合は、そうした方向になるのです)。

 また、IT革命の進展によって、今後ますます行政の窓口業務のあり方も大きく変わるはずであり、合理化によって「小さな行政・大きなサービス」を提供していくべきです。この意味からも、福祉事務だけを扱うハコモノを新たに追加する(正確には移転改築)する必要性は低いと考えます。(→Aに関連。ただし、現実には議案が可決したので、今後はこの施設を時代に合わせてどう活用していくか、考えはじめなければならないと思っているところです)。


 工事にあたって

 福祉事務所というのは、微妙な場所です。最近はそうでもなくなりましたが、生活保護を受けていることがわかってしまったら・・・という不安から、福祉事務所に出入りするということだけでも、抵抗を感じる人がいないわけではありません。ともあれ、とくにプライバシーに配慮すべきところが福祉事務所という場所です。

 ところが、認識が変わってしまったのか、今回の設計図をみると、採光重視ということで、道路沿いがガラス張りとなっていました。なんでも、暗くなりがちな福祉事務所を明るくする意図で設計したそうです。その意図も、じゅうぶんわかるのですが、本庁とは異なり、出入りするだけで利用者の意図が半ばわかってしまうような場所だけに、もう少し配慮があっても・・・と思わないでもありません。議案は通ってしまいましたが、ガラスの透明度を落とすなど、今からでも配慮していただければと願っているところです。



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