杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.52


(こんな保養所いらない・その2)

杉並区の宿泊施設は大赤字 その額は?


 いよいよ4月1日より、清掃事業が、東京都から23区の仕事に変わります。みなさんおなじみの清掃車も、東京都のイチョウのマークから、23区マークに変わります(これこそ、無駄な経費という批判もありますが・・・)。

 これに伴って、東京都清掃局の不燃ごみ圧縮中継施設「杉並中継所」も、区有財産となります。最近、全国どこに行っても聴かれる「杉並病」という名称が、ますます杉並区に重くのしかかってくるまで、あとわずかとなりました。


 都が認めなければ、向こう20年 杉並中継所が残るかも

 この5月26日に、政府は「公的宿泊施設の新増築禁止」を閣議決定しました。引き続き、この「宿泊施設」問題を取り上げます。前回の報告(その1 これが「すぎなみ自然村」の実態だ!)のつづきです。


 昨年の報道で、トヨタまでが自社保有の保養所を手放すという話がありました。国際会計基準の導入という現実の前には、超優良企業とて、安閑としていられないということのようです。トヨタでは、一昨年まで保養所で黒字が出ていたそうですが、経営が厳しくなれば、すぐに閉鎖するというのですから、たいしたものです。

 もっとも、保養所の経営など、本業とは何の関係もない事業なのですだから、当然といえば当然なのですが、こうした真摯な姿勢は、行政にこそ見習ってもらいたいものだと感想を抱いたものです(なお、トヨタさんの名誉のために書いておくと、正確には老人保健への拠出金や介護保険による負担増で、健保事業の収支が悪くなりそうだから閉鎖するのだそうです。もちろん、それは自治体のほうが、はるかに深刻な状況であることは言うまでもありません)。


 行政の保有している保養所こそ問題

 ところが、どうにも、緊張感のないのが、お役所というところです。切り詰めるべきところで決断することができず、必要度の高いところから次々と予算を削っているので、まったくツジツマが合わなくなっています。もちろん、ご多分に漏れず、杉並区もそんな状況。多くの区民が頻繁に利用するサービスをカットしている一方で、区民が毎日使うわけでもないサービスを現状維持しているような有様です。その典型が、区の保有している保養所をはじめとした宿泊施設の大赤字経営だと思います。

 杉並区は、関東近辺8カ所に宿泊施設を経営しています(うち2カ所が保養所)。もちろん、誰でも利用することができます(区外の利用者も区民と一緒に利用するなど条件を満たせば利用できます)。宿泊料(一泊2食つき)は、大人4,400円からと格安で、概して料理もおいしく、なかには温泉の出るところもあります。

 ところが、そううまい話はないもので、これらの施設は、毎年大赤字を出しています。安いのは、税金で補てんしているから安いだけなのです。とくに、2カ所の保養所(すぎなみ自然村・湯河原すぎなみ荘)が出している赤字が、あわせて
年間3億5000万円、さらに校外施設を含めた5カ所の宿泊施設で、毎年合計7〜8億円にものぼる赤字が発生しているという事実は、見過ごせないことです。

 本当に必要なところに予算をつけるためにも

 残念ながら、杉並区の保養所は、企業の保有している保養所より、問題はさらに深刻な状況にあります。税金や赤字区債という「打ち出の小槌」をもっているために(これだって、幻想なのですが)、チマチマした企画を考えたくらいで、努力していると言い張って、いつまでも経営し続けるのですから、困ったものです。

 最近、介護保険をはじめとして、社会サービスに明らかな低下が見られ、何とかしてほしいという要望が寄せられることがあります。もちろん、財政状況がここまで厳しいのですから、今までと同じというわけにはいかないはずです。しかし、区民が日常的に利用する地域の拠点(地域区民センターや出張所など)でのサービスを合理化する反面で、ほとんどの区民に利用されていない豪華な保養所を維持する必要など、いったい、どこにあるのでしょうか? 区の保養所を利用しているのは、ごく一部の区民に過ぎないのです。

 もっとも、役所に聴けば、廃止できない理由を山のように挙げてくるものです。しかし、足元を見れば、介護サービスや少子化対策の立ち後れは、相当深刻な状況にあります。杉並区の小中学校には、まだ満足にパソコン教育もできないような(インターネットひとつ接続されていないような)学校がたくさんあります。真に優先すべきものは何なのか、改めて整理しなければならないと思っていますが、みなさんは、どうお考えになるでしょうか?


 政府はこの5月26日に「公的宿泊施設の新増築禁止」を閣議決定

 私は、こうした保養所は、杉並区が経営する必要は全くなく、その矛盾を議会の場で何度も指摘してきました。主張した甲斐あって、遅蒔きながら、この2月にようやく検討対象に加えられ(行財政再建緊急プラン)、行政内部に「宿泊施設あり方検討会」が設置されました。

 しかし、まだ廃止がタブー視されなくなっただけのことで、本当にもどかしいものを感じています。まだ宿泊施設を今後どうするのか、ハッキリした方向は打ち出されていない段階ですが、私は長期的な慢性赤字を抱えるだけになっている宿泊施設は、廃止ないし独立採算制にするよう、今後も強く求めていく予定です。

 幸い、政府も、この5月26日に、公的宿泊施設の新増築禁止を閣議決定しました。国や特殊法人が設置主体となっている公的な宿泊施設・会館・結婚式場・健康増進施設などの増改築の禁止を明確に打ち出したのです。むしろ遅すぎたといいましょうか、私も、これは当然の決定だと思います。

 これで「かんぽの湯」や「メルパルク」なども、岐路を迎えることでしょう。激しい競争のもとで、まじめにやっている民間を圧迫し、行政が公的資金で赤字補填をしてまで宿泊施設を経営する必要はどこにもありません。こんなことを続けていては、税金は高くなり、借金も増えるばかりですので、今後、早期に完全民営化ないし独立採算制にすべきです。民間ができることは、民間に任せる。重税国家にしないためにも、急ぐべきです。

 区長の公約どおり「民間の経営感覚」導入を急ぐべき

 杉並区でも、すでに指摘したように、赤字上位5カ所の宿泊施設の赤字額合計は、この数年7〜8億円で推移しています。ちなみに、杉並区は、去年も今年も約15億円の赤字区債を発行するような状態に陥っています(建設区債を含めれば総額22億円の発行)。しかし、発行した赤字区債の約半分が、こんなバカな宿泊施設の赤字に消えている状態は、あまりに異常です。区長は、選挙のときに「民間の経営感覚の導入」を訴えていらっしゃいましたが、民間でこんな経営をしている社長など、いるわけがありません。

 ただ、まだまだ、こうした行政の宿泊施設の実態が、多くの区民に知られていないのが、実際のところかと思います。そこで、@行政の宿泊施設は、膨大な大赤字を出していること(杉並区でいえば、上位5カ所で毎年7〜8億円もの赤字になっていること)。A行政の宿泊施設は、そもそも新規利用者も少なく、リターン客が過半であること。そしてなにより、B公的資金で多額の補填をしており、放置すればするほど借金や税金が増えるだけであること。ぜひ、口コミで結構ですので、こうした事実を広くお伝えいただければ、と思います。


 
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