杉並区議会議員(無所属) 堀部やすし最前線 No.32

これは1999年12月の記事です。現在の状況は別のページで報告しています。


杉並公会堂の改築 〜PFIも検討とはいうけれど〜


杉並公会堂改築・基本計画

 この12月になって、新たな巨大ハコモノ工事となる杉並公会堂改築の基本計画が公表され、区議会では、先日の区民生活委員会で話題となりました。

 以前より、私はこの件について疑問を感じていました。ただ、私が当選する前より計画は進行しており、今年度末の3月には基本設計までが完成する予定となっていますので(すでに約6,000万円投資)、建設的に話を進めることも必要ではないか・・・との思いも頭をよぎったことがあります。

 しかし、今回出てきた計画をみて、さらに疑問は深まってしまいました。やはり、過ちを改めることを憚るのは、おかしなことだと思い直しています。

 まず、計画が出てきてビックリしたのは、その収容人員でした。敷地西側の区道が幅員11mしかないということで、法律的にも収容人員を1,200名以下とせざるをえないというのです(うち大ホールの収容定員は1,000人)。

 たしか、改築にあたっては、オーケストラを念頭においた音響の良いホールを目指していたハズなのです。

 いうまでもなく、オーケストラといえば、大編成の楽団。プロのオーケストラが収益をあげられるホールをつくるなら、そこそこ大きなホールをつくる必要があるはずなのです。

 法律的には、敷地の西側区道をわずか1m拡幅するだけで、2,400名まで収容できる大ホールをつくることができます。たった1mのことなのです。

 収容人員を倍にしても、かかる費用までが倍になるわけではありません。せっかく造ることを決めたのに、この区道を1m拡幅して2,000人以上収容できる大ホールを設計しないのは何故なのか・・・

 議会では、当然のことながら、他の先輩議員や私が、その理由を問い質すことになりました。しかしながら、区は現実的に実現不可能と言うだけで、どうも煮え切りません。

 いつものことながら、「できない」の一点張りが続き、室内は険しい空気が漂う一瞬もありました。


オーケストラも利用しにくい公会堂

 私は財政面からみて、従来から改築そのものに賛成しない立場でしたが、採算性を度外視したこの計画を受けて、ますますその思いを強くしました。

 というのも、区の説明によれば、新公会堂は、とくにオーケストラ演奏に適したホールを目指しており、一流のプロにも来ていただけるようなものを念頭においている・・・というわけなのですが、いくら音響設備が良くても、1,000人しか収容できないホールで採算がとれるプロのオーケストラなどないでしょう。

 区の基本計画ではオーケストラを念頭に置いたホールを、と言いながら、オーケストラ側の収益性までは念頭においていないのです。

 結局、オーケストラに適した音響は整備したものの、実際にプロのオーケストラはほとんど来なかった・・・ということにもなりかねません(※注)。おそらく区の意向に反し、利用はアマチュアか小編成のものが多くなるのではないかと思います。

(※注)ちなみに、杉並区は、平成6年より日本フィル・ハーモニー交響楽団と提携(わざわざ相互協力の覚書を締結)し、杉並公会堂や区役所ロビーなどで定期的にコンサートを開催していますが、鑑賞者はわずか数百人にとどまっています。


中野サンプラザまで電車で6分!

 議会での私の追及に対し、オーケストラ側の興行を考えれば、2,000名以上収容するホールでなければ、採算をとることは難しいだろうと区は自ら素直にこれを認めていました。

 ただ、それでも他との差別化を図ることで存在価値を示したいという意向を示しました。とはいえ、杉並公会堂は、近くの中野サンプラザ(電車で6分!)とも競合することになるわけですが、これに対応する緻密な戦略が立てらているわけではありません。

 結局、文化振興という美名の下で、採算を完全に度外視した改築を実行しようとしているわけです。もちろん、文化振興に採算性を求めるのはお門違いです。そんなことは心得ています。

 しかし、これからは、子育てや介護・環境保護に非常に多くの費用がかかる時代になるのです(しかも、現在ですら財政難で苦しんでいるのです!!)。これらを考えれば、区立の公会堂といえども、採算を全く度外視して良いというものではないはずなのです。

 そもそも東京は狭いのです。一区に一つずつ公会堂がなくても困らないはずなのです。

 だいたい、杉並公会堂から電車に乗って5〜6分のところに中野サンプラザがあるような地理的条件を考えてみても、とてもじゃないですが、杉並公会堂が21世紀に必要不可欠な施設とは思えないのですが・・・


公会堂を裸にすると・・・

 なお、新公会堂は、地上4階・地下3階・塔屋1階。現公会堂の解体から竣工までは約40ヶ月(3年半程度)もかかるそうです。いかに大規模な作業となるかお判りいただけるでしょう。

 ちなみに、解体費用を含めた総工費は、約85億円(見込)。区にカネがないと宣伝し、出張所は統廃合・サービスセンターは原則廃止などと厳しい行革大綱を打ち出している割に、これはずいぶん優雅な計画です。

 もちろん、改築は区の単独事業ですので、このままの計画では全額が杉並区の負担となる見込みです。

 下は、杉並公会堂の収支です(平成10年度)。本当に多くのコストがかかるものであることが、よくわかります。

杉並公会堂の収支(平成10年度)

収入 ○○○○ 2366万 4974円
コスト     維持管理費  施設運営費   人件費・常勤(6人分)  1億 6055万 1152円
↑ 人件費・非常勤(2人分) 


PFIも検討とはいうけれど・・・

 すでに設計のために6000万円以上もかかっているとはいえ、スタートしたら85億円もの壮大なムダ遣いになってしまいます。

 もちろん、完成後は、毎年少なくとも1億円以上、区が持ち出しをしなくてはなりません。

 それにしても、人口50万を誇る大都市で、莫大なカネを使って立て替える大公会堂です。区長も、「区のシンボルとなるような公会堂にしたい」と言っていましたが、その大都市のご自慢の公会堂に、そんな小さなホールしかないものというのも、ずいぶん間の抜けた話ですね(笑)。

 今の定員でも、杉並公会堂は狭く、成人式ひとつとっても、朝昼の2回に分けて実施しているくらいなのです。そこに、現在よりもさらに収容人員の少ない公会堂を建てるというのです。

 こんな中途半端なものを莫大な借金をして造り、さらに赤字を拡大させるくらいなら、やめた方がいいと思うのは私だけでしょうか?

 ところで、区は一通り質疑応答を済ませた後、最後に、話題のPFI(イギリスで始められた民間主導の公共投資方法)も検討していると付け加えました。

 だったら、なおのこと収容人員の増加(=区道の1m拡幅)は採算性の向上からみても不可欠だと思うのですが・・・今後、さらに区で進める検討作業の行方を見守りたいと思います。



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